2010.04.01

【今年の研究計画】学習を目的としたワークショップにおける創発的コラボレーションに関する研究

みなさま、こんにちは。修士2年の安斎勇樹と申します。

今年度も研究室メンバーが毎週ブログを更新していきますので、どうぞよろしくお願いします。

さて、年度始めということで、【今年の研究計画】と題しまして、
それぞれの学生の研究計画をご紹介していくことにします。

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ちょうど1年前に山内研に入り、こんな研究計画を掲げていましたが、
1年間の文献レビューと実践経験の影響で、つい最近テーマがガラリと変わり、
ようやく自分のやりたいコトにスポッとハマった気がしています。(遅い・・?)

さて、早速ご紹介します。


○研究テーマ

『学習を目的としたワークショップにおける創発的コラボレーションに関する研究』


○ワークショップへの注目~コラボレーションによる学びと創造~

現代では、複数の人々が協同して付加価値を生み出す「コラボレーション」が様々な領域で求められています。

コラボレーションの効用として、個人では思いつかない知恵がグループで新たに「創発」することや、そうした創発的なコラボレーションが個々のメンバーに良い学びをもたらす点が挙げられます。

近年、こうしたコラボレーションによる新しい学びと創造のスタイルとして、「ワークショップ」が注目されてきています。


○これまでのワークショップ研究

ワークショップ研究の歴史は浅く、そもそもあまり先行研究がありません。

例えば、山内研出身の森玲奈さんの研究では、ワークショップ実践家のベテランと初心者を比較し、ベテランがワークショップをデザインする際のデザインへの取り組み方の特徴を明らかにしています。

他にも、例えばリフレクションを支援するワークショップデザインに関する研究や、アーティストによる幼稚園でのワークショップにおける作品の制作過程を分析した研究などなど、いくつかの研究があります。


○創発的コラボレーションのカギは「1人の時間」!?

一方・・、これはワークショップの研究ではないのですが、チクセントミハイ&ソーヤー(1995)の研究によると、複数の人々のコラボレーションにおいて創造的な洞察やブレイクスルーを生み出すためには、「1人で活動する時間」を確保し、それを触媒として利用することが重要であることが明らかになっています。

つまり、ただひたすらコラボレーションをさせるだけでなく、「他者とインタラクションを持たない個人の時間」を持たせることが、創発的なコラボレーションにつながる、ということなのです。

しかしながら、これまでのワークショップ研究では、コラボレーションにおける「個人の活動」の重要性に注目したものはありません。


○研究の目的

そこで、本研究では、「個人の活動」に着目しながら、創発的なコラボレーションを促すワークショップのデザイン原則を仮説として提案し、それを検証することを目的とします。

つまり、

「個人の活動」に着目して、こういう風にワークショップをデザインすれば、グループディスカッションがより創発的になる!

ということを結論として言いたいのです。


○研究の方法

研究の方法としては、LEGOを用いた創作活動を課題としたワークショップを、大学生を対象に実践する予定です。

その際に、同じテーマで

 (A)仮説に基づいて「個人の活動」を触媒にしたワークショップデザイン
 (B)「個人の活動」を用意しない通常のワークショップデザイン

の2通りのデザインでそれぞれ実践を行い、グループディスカッションの創発プロセスや、出来上がったアウトプットの創発性を比較・評価します。


○今後の課題

今後の課題としては...

(1)仮説の精緻化:個人の時間どのタイミングで入れ、どんな活動をさせればよいか

創発を生み出すデザイン原則の仮説を提案出来なければ始まりませんので、
この仮説を今後じっくり練り上げていきたいと思っています。
既にいくつか仮案はありますが、実践して色々と試しながら精緻化させていく予定です。


(2)"創発"をどのように評価するか

これが一番の課題になるかもしれません。
創発的コラボレーションを評価するにはどうしたらよいか?
発話データからプロセスを分析をして、話題の展開やアイデアの連鎖を分析するのか?
出来上がったアウトプットの作品としての創造性・創発性を評価するのか?
...これもいくつか仮案や参考に出来そうなモデルはあるのですが、
これから慎重に検討していかなければいけないポイントです。

以上の2つが、大きな課題ですが、急なテーマ転換のため、小さな課題は他にも山積みです。
これから気合いを入れて、詰めていきたいと思います!!


非常にざっくりとした説明になりましたが、以上になります。

1年後に「面白い」修士論文を提出できるよう、頑張って研究を進めていきます!!


[安斎 勇樹]

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