2010.03.14

【ylabと私,この1年】つくる・つたえる・つみあげる

みなさま,こんにちは。
メンバーがそれぞれの目線で4月からの1年間を振り返るシリーズ【ylabと私、この1年】第7回目は,修士1年の伏木田稚子が担当いたします。

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今わたしは,真っ白なキャンバスに向かうような気持ちで,このブログを書いています。
山内研に入ってから早1年。
振り返ろうとすると,いろいろな想いが押し寄せてきて,頭の中がぐるぐるっと廻ります。
何をどう綴ろう,学んだこと,気づいたことが駆け巡ります。
その合間にある,わたしの中の根っこ,本音の部分をていねいに取り出してここに書こう。
そんな気持ちで,今,感じている限りのことを記し尽くしてみたいと思います。
少し長くなってしまうかもしれませんが・・・。

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この1年,それまで知らなかったこと,知り合わないできた方々に出会う機会が多くありました。
ひとつひとつが小さな喜びでもあり,正直なところ,とてもしんどいことでもありました。
未知なものはこわい,それを自分が受容できるかわからない。
そんな不安が常に付きまとい,浮き沈みの激しい自分に落ち込むこともしばしば。
ある物事に誰かが精通していて,自分は何もできないゼロの状態なのだと認めることは,わたしの前に大きな壁となって立ちはだかりました。
なぜなら,「追いつきたい」「できれば追い越したい」という前向きな気持ちと,「どうしてこんなにできないのだろう」「絶対にできるようになれない」という後ろ向きでうじうじした気持ちとが拮抗し,その間で何も努力ができない自分にうんざりしてしまうからです。

人が乗るビッグウェーブにどぎまぎして,乗り損ねる自分にあたふたする日々。
常に次を見据え,前をしっかりとみて歩み続ける先輩や同期の姿は本当にまぶしかった。
知をinputし,自分の中でじっくりと咀嚼してからoutputする繰り返しを放棄しそうになるわたしにとって,ひたむきに頑張る周囲の人々は,力強くて重みのある憧れでもありました。
嫌なものにふたをしない,できない自分を認める,失敗におびえてあきらめない。
そういうことをただひたすらに学んだ1年は,「つくる」「つたえる」「つみあげる」の3ステップに尽きるような気がします。


●つくること●

修士はひとりでこつこつ研究をするところ。
そう思い込んでいたわたしにとって,グループワークが中心の講義は,たくさんの気づきと戸惑いの嵐でした。
誰がどうリーダーシップをとるのか,何をどうすれば全員の考えを織り交ぜられるのか。
考えること,工夫することは山ほどあります。
取り入れるべき知や,自分の研究に活かせそうな素材も,そこかしこに転がっています。
けれども,講義で何かを得ることではなく,講義を乗り切ることが目的になってしまうと,自分の研究に目を向けることがおろそかになります。
そうかといって,自分の研究にぐーっと意識を集中させ過ぎると,多種多様な知を俯瞰できなくなります。
例えるならば,色とりどりのビーズを前に,ネックレスが作れないと困り果てている状態でした。
どれを糸に通すか,どう色を組み合わせればいいのか,糸の長さはどうしたいのか?
さて,困った,何が何だかわからない!自分は何を作りたかったのだ?
・・・と混乱してしまうのです(笑)
知をinputすること,inputした知を咀嚼すること,それらを他の知と組み合わせること,そして知のつながりをoutputすること。
それは,ビーズをつなげてひとつの作品をつくることと重なります。
隅々まで思いを巡らせ,頭を使っては考えをひねり出す。
それを多角的に見直してはつくり替える。
その連鎖を楽しみながら,ときに大いに苦しみながら過ごせた1年はしあわせだった。
今になってそう思えるようになりました。


●つたえること●

たくさんの方々に支えていただきながら,Beatingというメールマガジンの記事を書くお手伝いをしていました。
科研費を活用されている研究者の方にインタビューに行き,研究の内容や進め方についてお話を伺い,それをまとめる。
その一連の作業は,お話をしてくださる方との対話+わたしの記事を読んでくださる方との交流でもありました。
自分の考えを相手に伝えるとき,どうしても誤解が生じます。
対面であれば,絡まった糸をほぐすようにもう1度伝え直すことも可能ですが,文字だとそうもいきません。
ましてや,わたしではない別の方の言葉を,文字で多数の人々に伝えるというのは,本当に難しいことでした。
話して下さった研究者の熱意が伝わるよう,内容に誤りがないよう,正確かつ的確にまとめて伝えることは,ラブレターを書くときのような緊張と心配りを要するものです。
けれども,BEATingという「公に書く」機会を与えていただいたことで,集中して想いを文字に込める大切さ,相手に想いを伝える楽しさを味わうことができました。
この場をお借りして,研究への愛を存分の語ってくださった研究者のみなさま,わたしの書いた文章を読んで下さった読者のみなさま,外に出て学ぶ機会を与えてくださった山内先生,取材のノウハウを1から教えてくださった御園さん,構成をチェックしてくださった北村さんに感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。


●つみあげる●

研究室の先輩,同期,講義で知り合った他の研究室の同期。
大学内で一緒に学んだ人はもちろん,学会やシンポジウム,中原先生主催のイベントや,同期に誘われてのワークショップなど,大学外でも未知な事柄に触れる機会の多い1年でした。
もともと,あまり多くのことを一度に取り入れるとお腹を壊してしまうわたしにとって,消化不良に終わった出来事もいくつかありました。
そして,これから時間をかけてもう1度自分のものにしていきたい事柄もたくさんあります。
振り返り始めたら,1時間もたたないうちにこんなにいろいろな想いがあふれ,まとまらなくなってしまうほど,驚きと喜びと辛さに満ち満ちていました。
そして,人の目を気にする余り,力を注ぎ切れなかった悔いも山積みです。
来年こそは,周りの流れに沿いつつも,自分らしい風を吹かすことができるよう,知や人とのつながりをこつこつと積み上げていきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。


[伏木田稚子]

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