2010.03.17
最近SNSなどソーシャルメディアの教育利用に関する研究が増えています。インターネットが普及し、オンラインであることが当たり前になった現在、ソーシャルメディアが教育の付加価値をあげる方法として検討されるのは自然な流れでしょう。
ただ、ソーシャルメディアの教育利用についてはここ10年解かれていない2つの難問があります。
1) 閉じたネットワークの場合
教室やメンバーの流動性がない共同体にソーシャルメディアを導入する場合、限られた人数では活性度があがらないという現象が発生します。このケースの場合は現実の人的ネットワークと二重化しているので、一般的に現実の人的ネットワークに介入すれば活性度はあがるのですが、ソーシャルメディアによって教育的価値が向上したというよりも、共同体のマネジメントによってあがった価値がソーシャルメディア上に現れたと考える方が自然ですので、導入の必然性に疑問符がつきます。
2) 開かれたネットワークの場合
Twitterなどの開かれた(誰でも参加できる)ネットワーク上で学習コミュニティを構成する場合、活性度の問題は新規参入者がいる限り表だってでてきません。ただ、この場合、発言してアクティブに活動している人がごく一部に偏るケースがほとんどで、学習という面では学んでいる人とそうでない人の差が極端に出てきます。オープンネットワークでは持てる者はますます富み、持たざる者はいつまでたっても貧しいという格差の問題を抱えるのです。
1) 2)とも、ソーシャルメディアの教育的利用を考える際にははずせない根の深い問題です。今後BEAT(ベネッセ先端教育技術学講座)において、3年間かけて考えていきたいと思います。
3月27日には、そのキックオフになるシンポジウム「学習環境のソーシャルイノベーション:未来を拓く自律的人材の育成」を開催いたします。ぜひご参加ください。
[山内 祐平]