2010.02.02

【エッセイ】マニュアル作成の教育的意義

昨日、冬学期の教育部授業「ワークショップのファシリテーション」が終了しました。この授業は、学部生を対象として、情報学環・福武ホールで開催されている子ども向けワークショップ (CAMP主催 クリケットワークショップ) にファシリテータとして参加することによってファシテーションに関する考え方や実践的スキルを学習することをねらいにしています。

授業は、CAMPの人材育成プログラム「あちこちCAMP」とコラボレーションする形で展開され、ファシリテーターマニュアルを参照しながら、実践を行う形で進みました。

今年は新しい試みとして、CAMPで作成・提供しているオフィシャルマニュアルに「追補版」を作るという活動を最後に組み込みました。

マニュアルは通常、「状況Aにおいて、主体Bが、行動Cを為す」という命題で記述されます。ワークショップやファシリテーションにおいては、Aの状況判断とCの具体的行動が難しいことはわかっており、その選択肢を増やす活動によってリフレクションをはかるというのがもともとのカリキュラム構成の意図でした。
しかし、昨日行われたCAMPファシリテータへの発表会で興味深かったのは、「主体B」によってAとCのリアリティが違うことから、ファシリテーションに関する本質的な議論が誘発されたことでした。例えば、「子どもがプログラミングに対して援助を求めてきたとき、方法がわからなかったらどう対応するか」という論点については、ファシリテータの専門性はプログラミングではないので、わからないと言って一緒に考えるというスタンスと、なんらかの支援ができるように、事前に準備しておくべきだというスタンスの違いがそれにあたります。

主体Bが熟練者であるか、初心者によっても違いがありますが、同じ熟練者でも立場や信念によって微妙な差があります。マニュアルを制作し検討するという活動は、ワークショップの普及やマネジメントにとって重要であると同時に、暗黙知を可視化することによってファシリテーションの本質をあぶりだす教育的に価値ある活動であることを実感しました。

最後になりましたが、ご協力いただいたCSKホールディングスの田村さん、北川さんCAMPファシリテータの村田さん、内記さん、増田さん、大学院生の森さんにお礼申し上げます。

[山内 祐平]

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