2010.01.04

【オピニオン】Twitterでのなりすまし行為

Twitterでの鳩山首相なりすまし事件について記憶があたらしいところですが、正月には建築家の安藤忠雄さんのなりすましがありました。(既にアカウントは削除されています)

情報学環・福武ホールの建築の際に、安藤さんと事務所スタッフの方々に大変お世話になりました。安藤さんは密度の高いコミュニケーションを大事にしており我々とのやりとりもメールすら使わないようにしていましたので、このアカウントはなりすましであると判断しました。

実際のところ、こういったケースでは本人かどうかの判断は難しいと思います。タイムラインでも、不自然な点は多いが、真偽はよくわからないという反応が多かったようです。なりすましについては一般に不自然な点を批判的に読み解ければわかるはずだという論調もありますが、そういった能力がない人はだまされてもよいということにはならないはずです。

名前と肖像の組み合わせは人格の基本であり、それを剽窃する行為*1は人格権の侵害にあたります。人格の多様性とアイデンティティを認めることは、教育をはじめ様々な文化的行為の基盤です。これらが守られなければ、ネットワーク上で新しい価値が生まれることはなくなるでしょう。
思考やコミュニケーションの過程にできるだけ人工物を介入させないというのは安藤さんの思想であり、なりすましによってその思想は踏みにじられたことになります。
私は安藤さんと違った考えを持っていますが、少なくとも本人の顔と名前においてそれを主張し実行することは保護されなければなりません。

なりすましにどう対応すればよいか、現状考えていることを書き記しておきます。

▼Twitterユーザーができること
・なりすましと疑われるアカウントがあったら、フォローしないこと。
(なりすましの最大の動機は、有名人と同じように大切に処遇されたいという欲求です。フォロワーが増えると、欲求が充足されるので行為の持続を間接的に支えることになります。)
・なりすましと疑われるアカウントに関する不自然な点を指摘して注意を喚起すること。
(なりすましをする人は、自分がどう受け入れられているか気になっているので、名前で検索したり、クライアントで自分のアカウントをモニターしている可能性が高いと考えられます。疑われていることがわかれば、自発的にやめる可能性もあります。)
・なりすまされている人が知り合いであれば、連絡して真偽を確認し、なりすましであることが判明した場合は運営会社に連絡すること。
・知名度がある重要な役職に就いており、なりすましによって社会的混乱が予想される場合は、認証済みアカウントにしてもらうよう運営会社に要望すること。

▼運営会社がすべきこと*2
・ヘルプやTwinaviに、なりすましに関する対応窓口の情報を記載すること。
・ヘルプやTwinaviに、認証済みアカウントの申請方法や審査基準などを記載すること。

▼教育・マスコミが行うべきこと
・高等学校情報科において、教員がこの問題を教えること。
・ニュースや番組においてこの問題を紹介すること。

▼法律で対応すべきこと
・不正アクセスを経由しないなりすまし行為に対応する法令を整備すること。
(現状でも名誉毀損は適用できると思いますが、より明示的にすべきだと考えます。)
・なりすましに限らず、肖像権やプライバシーなど、インターネット時代に対応した人格権関連の法令整備を行うこと。

Twitterをはじめとするソーシャルメディアは、今後の情報化社会に欠かせない重要な存在であり、過剰に規制することなく発展できるよう様々なレイヤーで努力を重ね、成熟した存在へ脱皮して欲しいと願っています。

*1 ここでいう剽窃は、明示的に本人であると認識させる行為をさします。名前の一部を変えたり、本人でないことを断った上で行う批評行為は、この中に入っていません。
*2 運営会社にはこの要望をメールで送っております。

[山内 祐平]

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