2009.11.19

【オピニオン】科学研究費若手枠縮減について

▼科学研究費若手枠縮減について、以下の意見を文部科学省宛に提出しました。

文部科学副大臣 中川 正春様 担当政務官 後藤 斎 様

行政刷新会議事業仕分け対象事業のうち、科学研究費補助金若手研究枠の縮減について意見を提出します。
今回の行政刷新会議仕分けについては様々な課題が指摘されておりますが、特に科学研究費若手研究枠の予算縮減については、その決定プロセスに致命的な問題があったといわざるをえません。
インターネット中継により審議を聞きましたが、短い審議時間のほとんどはポスドク問題の現状認識に関する議論に費やされています。科学研究費若手研究枠(A)(B)は申請に研究組織が付与する研究者番号が必要であり、基本的にはポストを得た若手研究者向けの制度のはずです。論点等説明シートに記載されている内容も、成果検証や対象年齢、一般枠との重複であり、ポスドク問題は入っていません。審議時間が短いためポスドク問題と混同されてしまい、「実質的に無審議のまま」縮減案が決定されたとしか見えません。
国家予算の状況が厳しい中、研究資金だけが聖域であるとは思いません。しかしながら、縮減が必要であれば、研究に関する国家ビジョンをはっきりさせた上で、研究費の優先順位や配分に関する改善案を専門家も含めた会議で時間をかけて検討して決めるべきです。若手枠の機械的縮減は、研究の世界における弱者の切り捨てに他なりません。昨今の研究の多くの領域では、高価な機材や大量のデータ確保のための資金が必要であり、資金力があり業績をあげた高年齢の研究者が研究費を総取りしてしまう傾向が見られます。若手に対する研究費支援は、そのような問題を補正し、研究の世界の生態系を保つ重要な意味を持っています。予算決定の際に、この点をぜひご配慮いただきたく、お願い申し上げます。

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山内祐平(東京大学・准教授)

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