2009.11.06

【学びの大事典!】「協調学習」

みなさん、こんにちは。
さまざまな学習理論を分かりやすく紹介していくシリーズ【学びの大事典!】、
第6回は、修士1年の程が担当させていただきます。

今回ご紹介させていただく学習理論は「協調学習」(collaborative learning)です!


■協調的学習とはなに?
協調的学習とはなにかという問いに答えを出す前に、まずいくつか簡単な概念を確認しましょう。

◆教育現場でメインのあり方である一斉教授と一斉学習
一斉教授とは名のとおり、「学年と学級を定め、一人の教師が多数の生徒を対象に同一の教材を同時に教える」かたちです。
そこで行われる学びはいわゆる「知識伝達型」の一斉学習です。
つまり、まず教育専門家がカリキュラムを決め、今度は教師が、パッケージに詰め込まれた教育的栄養を学習者にあたえ、学習者には知的摂取のプロセスが期待されている一方向的な流れです。

こういう一斉授業は19世紀半ばから欧米よりスタート、しいて今や世界的にもっとも普遍的な教育のあり方となっていますが、能率がよいという利点に対して、19世紀末以来、一斉授業では子供の個人差や個性に応じきれない、子供の自発性を抑圧する、子供を受身にしがちだなどの批判の声が高まる一方です。


◆学びのあり方
上のような学習と教育をとえら直そうという思潮にのり、学習のあり方及びあるべき姿を追及しようとする研究も台頭してきています。
簡単に、学習の規模から
<個人学習>  <グループ学習>  <一斉学習>
という風に分けることができます。

協調学習は個人学習と一斉学習の真ん中のグループ学習の形をよく取っていますが、ただグループを組めばよいとも言えません。


◆いったい何が協調的(collaborative)学習と?(グループ学習と協同学習との比較から)
いよいよ協調学習の定義となりますが、やはり実際は色々説があり、これが絶対よいという定論にはなっていない状態です。しかも、たとえ同じcollaborative learningでも、協働と協調の二つの訳が両方とも多用されています。
・・・
Olsen & Kagan(1992:3)
協調学習=協同学習=cooperative learning:数人の小グループごとに作業を行うことによって学習を促進し学力の増進を図る教育的方法論の総称である。
森・池田・萩原・嵯峨・上原・喜多(2008)
協調学習:同じもしくは異なるレベルの知識や経験を持った複数の人が一つの目標に向かって協調作業し、それぞれが新しい知識を獲得する過程を目指す。
坂本・村上・菅原(2008):
「協働学習」とは、多様な学習者が、お互いの個性を認め合い、違いを乗り越えて新しい価値を追求する学習である。
・・・

さらに、協同(cooperation)という概念もよく混同されやすいので、ややこしいですが、区別をつけましょう。

同じくグループを組んで作業するにしても、協同(cooperative)学習の場合は、パートナーは課題を分割し、分割した課題をそれぞれ個別に解決し、それら部分的解決を組み合わせて最終的なアウトプットをします。
一方、協働/協調(collaborative)学習の場合は、パートナーの一人一人による手近の問題解決に関係する交渉や意図の共有過程で、調整されて同期的な活動であるため、パートナーはこの過程において「一緒に」作業を行うのが特徴です。

以上をまとめると、「学習者がグループ活動の中で互いの学習を助け合い、一人一人の学習に対する責任を果たすことで、グループとしての目標を達成していく、協調的な相互依存学習」と理解してよいでしょう。

■協調学習を支える理論
協調学習が有効であると証明できる裏づけの理論も前からあります。
協調学習を支える理論は主に情意的理論と認知的理論の二つの面からです。

情意的理論のほうでは、協調学習では、学習者個人の能力を向上させる機会とそれに対する報酬が保障されるので、学習に対する動機づけを高めることができ、また学習 者が学習自体に対する肯定的な意識を共有することも予想されます。グループ内では「協調」が強調され、グループ間ではまた適度な「競争」により外的動機付けが考えられます。

認知的理論のほうでは、Vygotsky(1978)が唱えた「最近接発達領域」(zone of proximal development)の考え方に基づく認知発達理論と社会構成主義的な認知構造の再構築の考えがあげられます。
ヴィゴツキーの最近接発達領域の説とは、一人ではできないことを、一度他人の協力によりできたら、その後自分の力でもできるようになると簡単に言い替えてよいでしょう。
認知構造の再構築理論は、学習した情報を自らの認知構造に結びつけるように再構築することにより、長期的な記憶は可能になるという諸理論(Ausubel, 1968; Brown 1994a)に基づくものです。

■協調学習の効用
上で述べた理論原理に基づき、協調学習が期待できる効用は

1.競争と協調作業により、学習の動機付けが強まる
2.協調作業を通じ、個人の実践的能力がレベルアップする
3.説明や過ちなおし、ディスカッションなどの外化により、理解の深化、メタ認知の養成、コミュニケーション能力の養成ができる
4.評価はグループの代表の誰かまでではなく、グループのすべての学習者が目標の学習を達成することを評価に反映できる
5.グループ作業が成功できるように、学習者個人の責任が大いに果たされる

などがあります。


また、コンピューター端末やネットワークをはじめとする「いつ、どこでも、誰とでも」学習できる情報インフラの整備が進んでいることから、この協調学習の文化の創出と関連産業の新展開の基礎としての役割を情報技術が担うことが期待されています。
日本では、協調学習支援技術の標準化がISO/IEC JTC1/ SC36において認められました。現在も「協調学習ワークスペース」と「学習者間インタラクションスキーム」の標準化項目に関する提案活動が進んでいます。
実際の活用現場では、知識工学の立場から開発されている教育支援の枠組みとして、コンピュータ支援による協調学習CSCL(computer supported collaborative learning)がここ数年研究者の注目を集めているところです。
例えば、オーストラリアのMacquarie大学により開発された協調学習のためのe-LearningシステムのLAMS(Learning Activity Management System)もオープンソースのソフトウェアとして、80カ国以上の国にわたり、フリーに使われています。


参考文献
「協調学習における学習プロセス設計及び学習環境提供技術の開発」古賀明彦など
『学習科学ハンドブック』R.キース・ソーヤー培風館
『JF日本語教育スタンダード 試行版』国際国流基金

[程 琳]

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