2009.10.09

【学びの大事典!】「有意味受容学習」

みなさん、こんにちは。
様々な学習理論をわかりやすく紹介していくシリーズ【学びの大事典!】、
第2回は、修士2年の大城が担当させていただきます。

今回紹介する学習理論は「有意味受容学習」です!

■学習を捉える2つの軸
Ausubel & Robinson(1969 / 1984)は、学習を分類するのに次の2つの軸を用いています。

軸1:受容学習―発見学習
軸2:有意味学習―機械的学習

1つ目の軸は、学習内容をどうやって学習者の意識に近づけるか、という方法を基にした軸です。これによれば、受容学習は、学習内容が最終的な形で提示されて行う学習を指すのに対し、発見学習は、学習内容が最終的な形では提示されず、学習者自身がそれを発見しなければならない学習を指します。

たとえば、「三角形の内角の和は180度である」という学習内容があった時に、そのことを直接教える場合には受容学習となり、そうではなく、三角形の角度を測る活動などを通じて、内角の和が180度となることを自力で発見させる場合には発見学習となります。

2つ目の軸は、学習者が、学習内容を自分が既に持っている認知構造に関係づけようとするか否かを基にした軸です。これによれば、有意味学習は「学習者が既知のことに関係づけて保持し、それによって『意味づけ』ようとする」場合を指すのに対し、機械的学習は、「自分がいまもっている知識への関係づけなしにこの観念を覚えようとするだけ」の場合を指します(Ausubel & Robinson 1969 / 1984)。

前述の例で言えば、「2つの直線が並行である時、錯角は等しい」という、既に学んだ内容を思い起こして、三角形の頂点Aを通り、辺BCに平行な直線を引いて、三角形の内角の和は180度となることを示せる場合には有意味学習が行われており、「なぜかは分からないけれど、とにかく三角形の内角の和というのは180度になるものらしい」という理解の仕方をすれば、それは機械的学習が行われているということになります。

■有意味学習の成立要件
名前だけ一見したところでは、受容学習=機械的学習、発見学習=有意味学習、と対応するように思えるかもしれませんが、これは大きな誤りです。

有意味学習の学習が成立するための要件として、Ausubel & Robinson(1969 / 1984)は以下の3つを挙げています。

(a) 学習材料そのものが、ある仮説的な認知構造に非恣意的で実質的な仕方で関連づけ可能でなければならない。
(b) 学習者は、その学習材料を関連づけるべき関連観念をもっていなければならない。
(c) 学習者は、これらの観念を認知構造に非恣意的で実質的な仕方で関連づけようという意図をもたなければならない。
(Ausubel & Robinson 1969 / 1984より引用)

つまり、有意味学習が起こるためには、学習内容そのものが、(たとえば無意味な数字や文字の羅列などではなく、)論理的有意味性を持っており(a)、学習者の側にも、学習内容に対して必要な知識があり(b)、かつ、その知識と学習内容とを関連づけようとするという構えがある(c)という条件が必要になります。

Ausubel & Robinson(1969 / 1984)は、この2つの軸を基に、学習を次の4つの型に分類しています。

有意味受容学習
有意味発見学習
機械的受容学習
機械的発見学習

このように、受容学習と発見学習、それぞれに有意味な場合と機械的な場合が起こり得ます。つまり、教師が学習内容をその最終形でポンと提示したとしても(=受容学習)、学習者が何らかの形で、自分が既に持っている概念に関連づけることができれば、それは有意味学習となり、逆に、試行錯誤などを通じて学習者が一般的な原理に自力でたどり着けたとしても(=発見学習)、自分が既に持っている概念と関連付けずに、ただ覚え込もうとすれば、それは機械的学習となるのです。

■有意味受容学習を促進する仕掛け:先行オーガナイザ
ここでは有意味受容学習についてもう少し見て行きたいと思います。有意味受容学習、と言っても、実際にはどのようにして学習が行われるのでしょうか?ポンと提示された最終形の学習内容と、学習者自身の認知構造との間にはギャップがあると考えられます。このギャップを埋めて、学習内容を学習者の認知構造に適切に結び付けるのを支援するものとして、先行オーガナイザという仕掛けが挙げられます。

先行オーガナイザとは、「学習すべき(有意味)教材の本体に先立って、関連するつなぎとめ観念の入手可能性を確かなものとするために学習者に提示される」ものです(Ausubel & Robinson 1969 / 1984)。

先行オーガナイザには、「概説的オーガナイザ」と「比較オーガナイザ」の2種類があります。1つ目の「概説的オーガナイザ」は、学習者にとって新奇な学習内容を扱う場合に用いられるものであり、学習内容全体の一般的で包括的な記述を指します。2つ目の「比較オーガナイザ」は、学習者にとって新奇でない学習内容を扱う場合に用いられるものであり、たとえば、ダーウィンの進化論を既に学んだ学習者に対してラマルクの進化論を提示する場合に、2つの理論の類似点や相違点を指摘する、ということを指します。いずれの場合も、学習者が学習内容を自分の認知構造と関連付けられるようにするために、学習内容のどんなところに、どのように注目すれば良いか、そのヒントを与えていると言えるでしょう。

■まとめ
このように、学習者にとって有意味な学習が起こるようにするためには、学習者が学習内容を自分の認知構造に、時としてその認知構造を大きく変化させながら、うまく取り込めるように支援することが必要だと言えます。

【参考文献】
Ausubel, D. P., & Robinson, F. G. (1984). 教室学習の心理学(吉田彰宏・松田彌生 訳).名古屋: 黎明書房. (Original work published 1969)

[大城 明緒]

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