2009.10.13

【エッセイ】FreeRiceモデルの可能性

Twitterの情報を追いかけていくうちに、新しいタイプの学習サイトを見つけました。

Free Rice: http://www.freerice.com/

Free Riceでは、クイズに1問正解する度に飢餓に苦しむ人々に10粒づつ米が寄附されるようになっています。クイズは、芸術、化学、言語(英語、フランス語など)、地理、数学から選べます。問題にはレベルが設定されており、正解するとどんどん難しくなりますが、途中でやめてもそこまでの米が寄附される仕組みになっています。(この記事を書く前に、アートクイズで220粒寄附しました。)

このサイトを運営しているのはWFP(国連世界食料計画)で、Harvard大のBerkman Center for Internet & Societyがパートナーになっています。2007年にはじまったこのサイトは、記事執筆時点で69,256,048,100粒の寄附成果をあげています。(寄附はバナー広告の売り上げから行われています。)

このモデルの特徴は、学習の成果と社会変革を接続している点にあります。行われる学習はクイズとフィードバックですので、50年前の技術です。ただ、今までは「よくできました」というメッセージが表示されるだけだったところを、「社会にとって望ましい行為」である米の寄附につなげる仕組みを作ったところにオリジナリティがあります。

子どもの学習は、将来に備えるために行われるものが多く、「なぜ勉強するのか」と聞かれたときに、社会的な価値につながることを説得することに苦労します。FreeRiceモデルはこの本質的な困難に技術的な解をあたえることができる可能性を持っています。
ただ、現在の構成では、学習の持つ内容価値と社会貢献で行われる価値がずれているため、外発的動機付けとしてしか機能しません。食糧問題についてより深い学習をした場合に、評価によって米が寄附される量が決まるという仕組みにした方が、より内発的な学習につなげられるでしょう。

[山内 祐平]

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