2009.09.29

【エッセイ】芸術活動の学習への影響

アート系ワークショップがさかんになるにつれ、それらの活動が学習にとってポジティブな影響があるのかという議論がなされるようになってきています。
ワークショップに限らず、学校教育でも同じ議論が繰り返されてきました。図工・美術・音楽などの教科は、あまり役に立たないものとして取り扱われがちです。

この問題を考えるときに興味深い研究が、1999年にアメリカで行われた、芸術活動の学習への影響に関する研究です。Catterallらが、教育省の持つ25,000名の生徒の成績を分析したところ、以下のことが明らかになりました。

・芸術活動に頻繁に参加している学習者は、そうでない学習者に比べて、高い成績をおさめる傾向があること。
・低所得者層に限って見ても、芸術活動に参加している層とそうでない層の成績に統計的有意差があること。
・低所得者層の方が、高所得者層よりも、芸術活動による成績の差が大きいこと。
・音楽と演劇については、数学と読解の成績と高い相関があること。

この知見は、ヨーロッパやアメリカの困難校で芸術教育を推進する動きと符合します。もちろん、芸術活動はそれ自体で人生を豊かにするという価値がありますが、芸術活動が学習全体によい影響をもたらすことは、芸術の社会的基盤としての重要性をあらわしているといえるでしょう。

[山内 祐平]

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