2009.09.22

【エッセイ】ラーニングツアーの基盤としてのAR

9月19日、20日、21日と東京大学で行われた教育工学会が無事終わりました。1000名を越える方々にご来場いただきました。ありがとうございました。

教育工学会開催の直前に、博報堂DY、KDDI研究所との共同研究のプレスリリースがでました。

▼CNETによる報道の引用 http://j.mp/9zAPW

 博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所は9月25日、26日の2日間、東京大学大学院情報学環山内研究室およびKDDI研究所と共同で、KDDIが現在au oneラボで公開している周辺情報表示アプリ「実空間透視ケータイ」を使った実証実験「東京大学ARキャンパスツアー」を実施する。

 東京大学ARキャンパスツアーは利用者の位置情報を元に、周辺に存在するキャンパス内施設の情報を数十名の現役東大女子学生がナビゲーションするというもの。被験者は本郷キャンパスを初めて訪れる10代から30代の男女20名程度。なお、ARとは「Augmented Reality(拡張現実)」の意味で、実世界上のリアルな人や物体に対して、コンピュータを用いて生成されたバーチャルな情報を付加提示する技術の総称だ。

 この実証実験は、KDDIと博報堂DYメディアパートナーズが共同で開発中の携帯電話向けナビゲーションアプリ「MAWARIPO実空間透視ケータイ」を利用する。被験者に東京大学ARキャンパスツアーの専用アプリがインストールされた実験端末を持ってキャンパス内を自由に散策してもらい、インターフェースの操作性や、大学に対する好意度・理解度などを検証する。

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学習環境について研究している私が、ARのプロジェクトに関わっている理由について、ここで補足しておきたいと思います。
数年前から、BEAT (ベネッセ先端教育技術学講座)を中心に、モバイル・ユビキタス学習環境の研究を展開してきました。いくつかの研究プロジェクトを通じて見えてきたことは、この新しい学習環境の可能性が「いつでも・どこでも」という普遍性ではなく、「今・この場でしかできない学びを生み出せる」という特殊性にあるということでした。
場所と時間に依拠した強力な学習経験として、誰でも思い浮かぶのが、旅の中での学びでしょう。最近は、ラーニングツアーという形で、この可能性を新しい学習環境として構成する動きがあります。
今回のプロジェクトは、東大キャンパスツアーというミニマムな構成をとっていますが、ラーニングツアーの基盤としてARをどう活かすかという発想でデザインされています。そのため、本やネットで調べられるような情報(赤門の歴史など)をあえて取り扱わず、そこで暮らす人々(ここでは大学生)の生活に埋め込まれた物語を聞き、想像してもらうという活動を中心にしています。実証実験は来週行われますが、新しいテクノロジーによって、儀式化したツアーを変えることができるのか、楽しみにしています。

[山内 祐平]

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