2009.08.31

【エッセイ】幸福を善意の行動につなげる

ウェブ上には、Q&Aコミュニティやオープンソースによる情報提供など、人々の善意を基盤とした学習支援の仕組みがたくさんあります。このような善意による寄附のシステムはどのようにして維持されているのでしょうか。
この問題を考える上で興味深いレポートが、Harvard Business Schoolから出されました。

Feeling Good about Giving: The Benefits (and Costs) of Self-Interested Charitable Behavior.

http://www.hbs.edu/research/pdf/10-012.pdf

この報告書では、善意の寄附による行為が発生し持続するメカニズムについて、著者らの研究を含めた様々な領域の実証研究のレビューから明らかにしています。

要点をまとめますと、以下のようになります。

1)自分のことを幸福だと感じている人はより慈善的行為を行う傾向があり、慈善的行為を行うことは、幸福だと感じるレベルを引き上げる。このふたつはポジティブフィードバックの関係にある。

2)慈善的行為に対して、金銭や記念品を贈る等のインセンティブを与えることは、寄付行為に対する長期的な意欲を損なう恐れがある。感情的な利得(より幸福になった)などを意識化させるやり方であれば、意欲は減衰しない。

これらの知見は内発的動機付け/外発的動機付けの理論とも類似した構造を持っており、興味深いものです。

善意の行動を持続させるための鍵は、"Happiness(幸福感)"にありそうです。人間の根本にあるこの感情を善意の行動につなげることは、社会を変革する鍵になるかもしれません。

[山内 祐平]

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