2009.08.28

【山内祐平のゼミズバッ!】大学院生の「いま」に目を向ける

院生の研究テーマに関連して、山内先生に研究のトレンドをインタビューする【山内祐平のゼミズバッ!】第5回は修士1年の帯刀がお送りします。
中高生がどのようにしたら教科に興味を持ち、かつ実力を伸ばすことができるのか。このような研究に関心を寄せる私は、今回学びの場を大学院に移して「学生の過去と現在の研究スタイル」という切り口からお話を伺ってまいりました。研究を志す学生のみなさまに向けた貴重なメッセージも収録!!それではさっそくまいりましょう。
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【帯刀】
大学院生時代は、どのような研究生活を送っていらっしゃいましたか?
【山内先生】
私は、大阪大学大学院の教育技術学研究室というところで水越敏行教授のもと研究をしていました。修士論文は、金沢と大阪の小学校に協力を仰ぎ、自分が作ったシステムを授業で使ってもらって評価するという研究を扱いました。
この研究室、何かのプロジェクトに携わった場合に、院生がチームを組んでどこかの学校にごそっと出かけていくことがしばしばあったのです。例えば、金沢の小学校に毎月7,8回も通っては泊まりこむ...そういう生活をしていましたね。フィールドワークというほど本格的なものは院生のときはまだやっていませんでしたけれど、いろんな学校に行って授業を見たり研究したり手伝ったりしていました。
【帯刀】
ご自分の学生生活と、現在の学生と比べて違いはありますか?
【山内先生】
(山内研において)今は割と学生自身の興味にまかせて出かけて現場の話を聞いてくるという形をとっていますが、私の院生の時は行く場所が強制的に決まっていたのです。
これはなかなか画期的でした。強制的に行くということは、先生も含め皆で行くということですから、同じ対象を皆が見ることになります。色々な見方ができるという良い点があるわけです。
今の私の研究室の学生を見てみると、ワークショップに興味のある人が2,3人で一緒にワークショップ実践を見に行くということはあるにせよ、学年を超えて皆で1つのものを見るという機会はほとんどありませんよね。そういう意味では、研究室の半分ぐらいがごっそり金沢に行くというような経験をした私の院生時代と現在の学生では、ちょっと違うかなと思うのです。
一方で現在のようなやり方をとると、学生の数だけアンテナが立つので情報を広く捉えることが出来るようです。(最近山内研では)ワークショップを見ている学生もいれば、歴史の授業を見ている学生や、研究室を見ている学生もいますね。情報の幅広さという面では私の研究生活とは比較にならないくらいありますよ、今のほうが。
色々な人が色々な所に行って、色々な情報をとってくるので、研究として見えている範囲は以前に比べてはるかに広くなってきたといえます。そういう意味では、善し悪しあって、どちらがいいとは一概に言えないわけですが。
【帯刀】
研究に携わる学生に向けてメッセ―ジをお願いいたします。
【山内先生】
研究を形にするには2つしかポイントがないのです。
ひとつは「人がやっていない新しいことをやる」ということ。もうひとつは「本当にやっていることがあっているのか、誰でも納得できる」ということ。つまり新規性と妥当性、この2つにつきるのです。
妥当性は、もう頑張って勉強するしかありません。どんな研究の方法を使えばいいかとか、ゼミでディスカッションすることでカバーできますよね。
問題は「新しさをどこに出すか」という部分で、研究を志す人が一番苦労するところなのです。自分がやろうとしている研究は新しいことなのか、本を読んだり論文を調べたりしないと確認はできません。ですからレビューはとても大事。でも新しさって、「こういうことがやりたい」とか「こういうことが出来れば素敵なことが起こるはずだ」というインスピレーションみたいなものがベースにないとなかなか生まれないんですよ。
この2つのポイントは、片方備えていれば良いというものではなく、どちらもなくてはなりません。きちんと文献で調べた上で、自分が持っているインスピレーションとの相互作用というか往復運動...そういうものを上手に出来るようになると研究を楽しめるようになると思います。
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今回は大学院生の研究スタイルについて山内先生ご自身の研究生活をもとにお話しいただきました。
先生の学生時代には、開発なさったシステムが授業実践の前日までうまく動かないということも少なくなかったそうです。その度に心臓が痛くなるけれど、思考錯誤して乗り越えられた時、やりがいとHard-Fun(苦楽しい)を感じられたとのこと。
様々な領域の研究において、トレンドを生み出していく次世代の研究者を目指す学生のみなさま、きっと「素敵なことが起こる」と信じてチャレンジングな研究生活を送ってみませんか。

[帯刀 菜奈]

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