2009.07.30

【山内祐平のゼミズバッ!】Webアプリケーション普及のインパクトは?

皆様、こんにちは。
今週からは、院生の研究テーマに関連して、山内先生に研究のトレンドを直撃インタビューする新シリーズ、【山内祐平のゼミズバッ!】をお送り致します。第1回は修士2年の大城が担当させていただきます。

私の研究のキーワードは、「高等教育」、「協同ノートテイキング」、「アクティブ・ラーニング」です。大学の講義型授業において、学生が2人1組のペアになり、オンライン・ワープロを用いて、1つの編集画面を共有し、ノートを協同でとる方法の提案と評価を行うことをテーマにしています。

この研究は、近い将来、学生がみな大学の教室にノートPCやネットブックを持ち込むようになること、そして同時に、ブラウザ上の文書の共同編集についても利用が増えることを見込んでいます。ということで、こんな質問をぶつけてみたいと思います!

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Q:
現在、Google DocsZoho Writer等が無料で利用可能であるのに加え、Office 2010ももうすぐ登場します。このようなWebアプリケーションの普及への動きは、教育ソフトウェアに関する研究に対し、どのようなインパクトを与えることが予想されるのでしょうか?先生のご見解を教えてください。


山内先生:
まず、アプリケーションをインストールしなくてもいい時代が来たということですね。今までは、たとえば「こういう使い方をしたら学習効果がある」、「こういう学習効果のある教育ソフトウェアを開発しました」といった研究が山のようにあっても、実はデリバリーのところで結構失敗してきたということがあります。つまり、必要な人に届けるまでのチャンネルを作るのが、今までは非常に大変だったため、実際に使われるところまで行かずに、研究で終わってしまう例が多かったのです。

これに対し、Webベースのサービス、たとえばGoogle DocsやOffice 2010、あるいは新しく研究開発されたWebアプリケーション等は、そこにアクセスさえすれば使えるものです。そういった意味では、研究で成果が確認されたことを、実際に対象とするユーザに使ってもらえる可能性が大いに出てきたと言えるでしょう。それは、研究の有用性の担保を考える時に非常に重要な観点だと思います。今まで、研究が「有用である」、「役に立つ」ということは、特に我々の研究領域では重視されてきたことですが、それは、役に立つことが「証明される」レベルで言われていました。しかし、このようなWebベースのアプリケーションの登場によって、実際にユーザが「使える」環境を考えられるようになりました。これは、かなり重要な、そして魅力的なことではないかと思います。

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なるほど...。Webベースのアプリケーションの登場と普及は、研究で学習効果が確認されたソフトウェアと、その対象となるユーザとの「距離」を縮めることが期待されているのですね。そして、より多くのユーザが研究の成果物を利用できるようになれば、より多くのユーザが研究者に対してフィードバックを行うこともまた容易になると考えられます。

研究者とユーザとの結びつきが強まり、両者を巻き込んだ研究サイクルがますます活性化されていくことでしょう。自分も、そんな研究サイクルが起こるような、ユーザにとって「役に立つ」研究を目指したい!と改めて思いました。

それでは、来週もお楽しみに!


[大城 明緒]

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