2009.07.24

【研究室の書棚から】マインドストーム

S.パパート(1980) 
マインドストーム:
子ども、コンピュータ、そして強力なアイディア.未来社


それは、ある「歯車に惚れこんだ」少年のものがたり。

ーー

本書を読んで以来、パパートと言えば学習における「興味深い活動」の意味をアツク語るおじさんという印象がある。

もちろん、会ったことはないけれど。
親近感をもてる著者である。

私はワークショップの研究をしているのだが、彼の思想には共感できる部分が多い。

ーー

「学習のためにつくられた数学」として、彼は「タートル」(亀)を使った幾何学を提案した。
すなわち、プログラミング言語「Logo」である。

彼は子どもの学びや、コンピュータと一緒に学ぶことに対して、
インパクトのあるアイディアを提案した。

ーー

しかし、私がここで紹介したいことはこれだけではない。

それは、今読んでも新鮮なこの 一節に代表される。

「本書では、どのようにブラジルのサンバスクールのような現実性のある、社会的に結合した、初心者も熟練家も共に学べるような状況の中で数学を学べるのかを検討してきた。サンバスクールは、異質な文化の中にそのまま持ち込むことはできないながらも、学習環境にあるべきそしてあり得る、一連の属性を示してくれる。学習は現実から離れたものではない。サンバスクールには目的があり、学習はこの目的のために学校の中で結合されている。ロゴ環境はある意味でサンバスクールに似ている。別の点では非常に異なってもいるが。もっとも興味深い類似点は、数学が初心者にも専門家にも分かち合えるような現実の活動であるという点だ。その活動は非常に変化に富み発見の可能性に満ちたものであるから、プログラムを習い始めた最初の日から教師にとっても新しい面白いことを生徒がするということである。


パパート、それは、学習に関する思想そのものを強力に動かした人であると思う。

ーー

『マインドストーム』は、全くかしこまった本ではない。
それは小説のようにすら感じる。

しかし、パパートの想いの裏にある、ひたひたとした思想には圧倒される。

アップルが生まれた時代・・・
認知の時代・・・

そして構成主義とは何か。
構築主義とは何か。

鍵はここにある。

ーー

私個人、偉大なる心理学者ピアジェそのものについての関心は強いとは言えない。
しかし、パパートがピアジェとの交流の中で自身の思想を創りあげたことを考えると、
やはり、自分の中にもピアジェを感じることがしばしば、あったりするのである。

ーー

余談だが、実は昨日まで、上野直樹『仕事の中での学習』を紹介しようと思っており、途中まで原稿を用意していた。しかしながら、Ylab Blogの別特集で以前取り上げられたことのある本だったことに気がつき、急遽『マインドストーム』を取り上げることにした。
西森先生による、Ylab Blogでの上野直樹『仕事の中での学習』レビュー

両書を並べて読むのは、案外、悪くない。
学習環境デザインに関心がある方には、
示唆に富む経験ではないかと思った。
オススメである。


【文責:山内研究室博士課程3年  森玲奈】

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