2009.07.06
この本は、400万ドル規模のリサーチプロジェクト「The Net Generation: a Strategic Investigation」をベースに一般向けに欠かれた本です。この手の世代論の本は、一面的な決めつけに陥りやすいのですが、一万人にのぼるインタビューをもとにしているため、現在起こりつつある世代変化を浮きあがらせるデータが出てきています。
5章にはネット世代における教育もとりあげられています。以下の引用「新たなデジタル時代においてよい良い教師となるための七つのヒント」(pp219-220)は、我々の領域の研究知見とも対応しており、新しい学習サービスの指針としても使えるものになっています。
1 単に教室内でテクノロジーを使えば状況が好転すると思ってはいけない。
テクノロジーではなく、教育法の変革にフォーカスしよう。学習プロセスにおいける教師と学生間の関係を根本的に変革することが重要だ。この点を理解し、学生にフォーカスし、カスタマイズされ、コラボレーションが可能な学習環境構築のためにテクノロジーを活用すべきだ。
2 講義の量を減らそう。
教師がすべての答えを知っているわけではない。さらに、ネット世代には放送型の一方通行の学習プロセスは通用しない。まずは、学生に質問をし、その答を聞くことから始めよう。学生たち自身に答えを発見させ、教師と共に学習プロセスを創り出していけるようにしよう。
3 学生たちのコラボレーションを推進しよう。
学生たちが互いに共同作業できるようにし、ウェブ上にある専門家の世界へのアクセス方法を教えよう。
4 試験のための学習ではなく、生涯学習にフォーカスしよう。
学生たちが卒業した時に何を知っているかは重要ではない。重要なのは生涯学習に対する情熱と能力を持っているかだ。歴史上の重要な戦いの日付を学生が忘れたからといって気にする必要はない。いつでも調べることができるからだ。何を知るかではなく、どのようにして学ぶかにフォーカスした授業を行おう。
5 各学生について知り、個々の学生のペースにカスタマイズされた教育プログラムを構築するためのテクノロジーを活用しよう。
6 八つの行動基準に従った教育プログラムを構築しよう。
学習プロセスには、選択の自由、カスタム化、透明性、誠実性、コラボレーション、娯楽、スピード、イノベーションがなければならない。プロジェクトベースの学習を行ない、ネット世代の文化と行動面の強みを活用しよう。
7 教師、教授、教育者としての自分を再発見しよう。
「朝起きて仕事に行くのが待ちきれない」と言いたくなる状況を目指そう。
教育以外にも、オバマ大統領の選出で一躍注目されたネット世代と民主主義の問題など、興味深いトピックが取り扱われています。北米と日本の状況の差も含めて、今目を通しておいて損はない本だと思います。
[山内 祐平]