2009.07.03

【研究室の書棚から】「映像時代の教育 -そのカリキュラムと実践―」

山内研の本棚にある本を紹介するシリーズ【研究室の書棚から】
第4回は、修士1年の帯刀菜奈が担当させていただきます。

今回ご紹介させていただくのは・・・・・
「映像時代の教育 -そのカリキュラムと実践―」
       吉田貞介編著 日本放送教育協会

■今から24年前、1985年に著された書です。
私は生れていません。インターネットなんてまだまだ普及していない時代です。
この時代、著者は、来るべき21世紀を見据え「今の子供たちに育てなければならない最も大切な能力」として、「映像情報を正しく読み取り、コミュニケーション手段として映像を制作するなど情報を駆使していく力が必要」と予見しているのです。

■ポイントは・・・・
映像による教育を、視聴覚教育として隔離するのではなく、国語科で言語や文字を教えるように、ベーシックなものとしてとらえ、実践していくところがすごい!
ともすれば観念論に終始しがちなところを、カリキュラムの設定、そして授業での実践と具体的に検証しているのです。
その過程で、(映像教育を推進するにあたって)子供たちに、
①映像視聴能力 
②映像制作能力 
③映像活用能力を発揮することを期待しています。
私が刮目したのは、②の映像制作能力です。
著者は、ただ単に、映像教育という新奇性で時代の波に乗ろうとしているのでありません。
映像教育の目指すところに「映像を駆使して自分の考えを伝達できる子」の育成を掲げているのです。
国語で言う読み取り能力だけではなく、書き取り能力(作文)も大事だということです。国語で教わる文字のように映像を理解し、作文のように映像を作るというのです。

改めて・・・・今から24年前の著書ですよ。
母に聞いたら、スーパーマリオが大ヒットして社会現象になり、おニャン子クラブが席巻し、バブル全盛の時代ですって。

著者の予測通り、メディア環境は大きく変わりました。でも、国語の授業における読み書きのように、映像が活用されているでしょうか。著者の映像教育の情熱や意欲はどのような形で集約されていったのでしょうか。

私はこの本に触れ、24年後の今を、2009年の映像時代の教育をもう一度検証してみたいと思いました。

■こんな時に手にすると・・・・・
時代を読む、予測するというのは簡単なことではないですよね。
情報世界の予測や、社会環境の変化について研究する時、観念論では説得力がありません。実践を通して検証していく、その方法論を考えるときこの本は役に立ってくれると思います。父や母が手塚治虫の鉄腕アトムで未来を体感したように、もしかしたら、吉田貞介氏(とそのグループ)は、「映像と教育」の手塚治虫かもしれません。

[帯刀菜奈]

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