2009.06.16
▼山内が責任者で博士課程の森さんが企画担当の福武ホールカフェイベント"UTalk"が読売新聞夕刊で紹介されました。ウェブでもご覧いただけます。
「知的刺激、カフェイベントが盛ん 専門家と一般人 くつろいで議論」
最近の学問の話題をめぐって、専門家と一般人が話し合う「カフェイベント」が盛んになっている。少人数で飲み物を手にざっくばらんに話し合うところが、講演会とは違う。
学生街の喫茶店のような雰囲気が好評だ。研究者にとっては、成果を社会にアピールする場になっている。
専門学校「文化学院」(東京都千代田区)では、4月から、学内の講師が話をする「クリエイティブ・カフェ」を毎月第3金曜に開いている。事前申し込みが必要で、参加費は500円。コーヒーと菓子が用意される。
「北欧のデザインと社会」をテーマにした4月の会では、デザインに詳しいジャーナリストの井上雅義さんが出席。参加者の男性から、一部屋全部をスウェーデンの家具メーカーの製品でそろえたという話が出て、井上さんが「デザインが良いわりに価格が安く、引っ越しの多い人が購入する傾向があるようです」と応えるなど、対話が盛り上がった。
5月はアジアの貧困や環境問題を取りあげた。3回目の今月19日の会では、都市における芸術の役割をテーマに、東京芸術大学教授の木幡(こばた)和枝さんが話をする。
同校顧問で武蔵野美術大学教授の柏木博さんは「昔は学生街に喫茶店があって、そこで、いろんな話題を議論できた。そんな場所がほとんどなくなった今、学校が用意をする必要がある。参加者も、知的好奇心がくすぐられるはずです」と話す。
研究者が成果を気軽なカフェの場で発表する試みは、科学分野では「サイエンスカフェ」と呼ばれ、各地の大学や研究機関での開催が定着している。さらに最近では、科学に限らず、幅広い事柄をテーマに掲げる会が目立ち始めた。いずれも、研究成果を社会にアピールすることを目指している。
大阪大学では、昨年10月から、京阪電鉄中之島線の「なにわ橋駅」(大阪市北区)の地下1階のスペースで、研究者を招いた「ラボカフェ」を月10回程度開いている。本を取りあげる「書評カフェ」、医療現場の話題を取りあげる「臨床カフェ」のほか、哲学を考える「哲学カフェ」などがある。「鉄道カフェ」では、鉄道工事の記録映画を観賞し、参加者同士で感想を話し合ったという。
東京大学でも昨年3月に完成した「福武ホール」(東京都文京区)で、月1回カフェイベントを開いている。これまでに、アミノ酸、人工衛星、歴史小説、人と動物のつきあい方など多種多様なテーマで会を開いてきた。企画に携わる大学院生の森玲奈さんは「東大だけで4000人の教員がいる。おもしろい研究をしているのに、まだ一般に知られていない人に話をしてもらっています」と話す。
講師の話が弾むように、ホスト役を用意し、対談形式にした。人数は15人程度に絞り、予定する1時間の半分近くを質疑応答に充てている。
東京大学大学院情報学環准教授の山内祐平さんは「専門家も一般の人と話をすると、思いもよらない学びや発見がある。カフェの雰囲気を生かしながら、学校の中にある知を外部に公開していきたい」と話している。
(2009年6月13日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20090613-OYT8T00251.htm