2009.06.19
こんにちは。
山内研の本棚にある本を紹介する新シリーズ、【研究室の書棚から】の第3回は、修士2年の岡本絵莉が担当いたします。
今回ご紹介するのは、
植田一博・岡田猛編著,2000年,
『協同の知を探る 創造的コラボレーションの認知科学』
共立出版
です。
これはズバリ、協同(collaboration)についてまとめられた本です。
協同の定義から始まり、「協同」に関する認知科学の分野の論文が多数掲載されており、中身の濃い一冊となっています。
■□何がおもしろいのか□■
「協同」を切り口に、様々な視点が盛り込まれているところ。
私はこの本を始めて読んだのは、学部4回生の時でした。
その時、「"協同"という概念を使うことで、こんなにいろいろなことが見えてくるのか」と思ったことを覚えています。
実際、本では、社会文化な視点、ヴィゴツキー主義の視点、科学者の仕事を「協同」として考えること、協同について研究する際のポイント、協同が建設的に行われるための前提ほか、多くのことが入っています。
そのため、一貫した主張にもとづいて本が構成されているわけではないので、じっくり本の中身と向き合わないと、ちょっと読みにくいかもしれません。
■□こんな人に良いかもしれません□■
「協同」に関する認知科学分野の研究例もいくつか掲載され、また、内容のすべてに参考文献の索引がつけられています。
「"協同"についてざっくり知りたい」「自分の興味って"協同"と関係あるかも」という人にとって、また、「"協同"をいろいろな視点から考えてみたい」という人にとって、この本は役に立つと思います。
●○個人的な感想○●
意識する、しないに関わらずしていること(この本では"協同")に着目し、それを厳密に把握しようとする、こうした認知科学の本は、山内研究室の本棚の一角を占めています。
いろいろな学問を踏まえた上で、自分のスタンスを決め、研究ができるのが学際情報学府のおもしろさ(大変さでもある)だと思うのですが、それが研究室の本棚には表れていますね。
...書いてみて気付きましたが、学際情報学府に来るまでは、「この学問は、こういう視点で見ているのだな」ということを考える機会があまりなかったように思います。
研究に関係する本を読む時には、「この本で書かれている知見は、どういう視点から、何を意図して行われた研究から出てきたのか」を考えてみるのも良いのではないでしょうか。
[岡本 絵莉]