2009.06.12

【研究室の書棚から】「学習方略の心理学―賢い学習者の育て方―」

山内研の本棚にある本を紹介するシリーズ【研究室の書棚から】、
第2回は修士課程2年の大城が担当させていただきます。

今回ご紹介させていただく本は、こちら!

辰野千壽[著] 1997
『学習方略の心理学―賢い学習者の育て方―』 図書文化

■目次
章見出しだけ抜き出すと、このような内容が並んでいます。

第1章 学習方略の考え方
第2章 学習方略のタイプ
第3章 学習方略の体系化
第4章 学習過程と学習方略
第5章 自己制御学習と学習方略
第6章 学習方略の選択と使用
第7章 学習課題と学習方略
第8章 学習方略のテスト
第9章 学習方略の訓練


■内容
その名の通り、学習方略について書かれている本です。
上に抜き出した目次をご覧いただいてもお分かりのように、

学習方略の定義や類語(勉強方略、認知的方略など)との比較から始まり、
学習方略の個々のタイプの解説(リハーサル、精緻化、体制化...etc)、
学習過程と個々の学習方略の対応関係、
学習者はどのようにして学習方略を選択・使用しているのか、
学習課題(文章のタイプ、外国語学習、問題解決場面)に応じた学習方略の違い、
学習方略の調査方法(調査票の具体例も紹介されています)、
学習方略の訓練方法と実践例、

について、詳細に述べられています。

また、例えば「自己制御学習」に対する、
行動主義的な考え方、社会的認知からの考え方、情報処理的な考え方など、
立場の違いによる、考え方の共通点・相違点についても整理されているため、
「学習方略」に関して気になる用語や概念を勉強したい時に、
それを多面的に把握するのにも役立ちます。

本書で扱われている学習としては、「読み」に焦点を当てた部分が大きい印象を受けますが、
そこで紹介されている理論は、「読み」に限らず、授業を受ける時など、
他の学習場面に当てはめて考えることも、十分に可能な内容だと思います。


■こんな時に参照できる!

研究の対象としたい、「学習者」や「理解」、扱う「学習課題」と言った時に、
それを理論に基づいて正確に説明することは、意外と難しいことだと思います。

ついつい「学習者を支援する」「理解を深める」という
言葉でひっくるめてしまいそうになるのですが、
これはとても危険なことです。(...と、最近、身にしみて感じています。)

どんな学習スタイルの学習者に対して、
どんな学習方略を使って学習課題に取り組んでもらい、
どんなレベルの理解を深めてほしいのか?

それらを具体化し、理論的に説明するのに、本書は役立つと思います。

[大城 明緒]

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