2009.05.17

【今年の研究計画】文化的適応のための異国者同士によるペア協働的語学学習に関する研究

みなさま、こんにちは

四月より修士課程一年生として進学してきた、程琳(テイ・リン)と申します。

【今年の研究計画】シリーズ第6回は、M1の程がお送りいたします。

私のやりたい研究とは、
母語と国籍の異なる人たちがペアを組んで、両言語を用いながら、学習するという場面において、学習意欲や学習効果に影響を及ぼす要因をはっきりさせたい、そして、できれば、それからもう一歩先に考えると、こういう学習をより有効にさせるパターンの提案もしたいです。

一方、活性化を目指す第二言語習得の支援法に関する研究として、1960年代のイマージョン・プログラム(没入法)から、近年CSCL(Computer Supported Collaborative Learning)など、コミュニケーション重視の研究は絶えず注目を浴びています。

ところで、私の研究とはと聞かれるとき、どうも一言で自分のやりたい対象がうまく言えないといつも痛感しながらも、やはり、この対面的な、協働的なペア学習のケースを、自分の研究テーマとして取り上げたいと、そこだけがずっと変わっていません。

さて、どうして、こんなにこだわっているのかといいますと...
私は、大学時代の専攻が日本語でした。日本語専攻といっても、周りにいる仲間は私と同じような「日本語専攻」の中国人にほかならなかったのです。みんなコミュニケーションの力をアップしたくて、クラスの仲間と学習ペアを組んでみたら、そこで、困ったのはいつも二人とも同じ問題に「わからない」と感じたところです。それから、二人の中では、通じているつもりでも、実は日本人には通じないところが多く、実際の運用まで行っていないところがしょっちゅうありました。

当時、担任の先生に言われたアドバイスは、「日本人のように日本語を話せるようになりたい場合は、やはり日本人とコミュニケーションをとる限りだ」この言葉に励まされて、日本人とペアを組んでみました。
うまくやったところもあれば、意外につまずくところもありましたが、相手の顔が見えて、身振り手振りなど、ありうる手法尽くして、やっと伝わったところこそ脳に焼き付けられるのです。
文法の正しさとかの「知識」らしきものは、本に従えば必ず正答が見つかるが、こういう文化的な適応となる学びはやはり身をもって行うべきだと思うようになってきました。

そこで、この対面的な協働ペア学習を支えうるものとして、修士課程の研究をしていきたいと思います。

といったら、またまた問題が山ほど殺到してきます。

?コミュニケーションが取りたいなら、どうして、プログラムよりも対面的でなければならないんですか?
?小学校とかのグループ分けで共同作業をこなすための協調学習とはここでいう協働学習とはなに?どういう意味で協働と言える?
?それは果たしてお互いに教えるのか?または学びあうのか?
???

とにかくハテナにハテナです。

自分の経験から言うと、第二言語習得(つまり、日本語が上手になりたい)がねらいだから、それがこの学習形式が持続できる本音だと思われました。
しかし、確かに、問われたとおり、他の様々な方法でも、言語学習はできるのです。
そこで、このペア学習の経験で一番得したのは何かと再び考え直してみたら、やはり文化的適応にほかなりません。日本語の運用はただ文化的適応の経験につねに伴って行われている交際手法に過ぎないのです。

ということで、あえて仮説として、「文化的適応のために行われる異国者同士のペア協働は第二言語習得のコミュニケーションを活性化できる」と想定し、そこで、特に日常的な文化適応のテーマを取り上げることにより、いかなる学習が行われるかを分析したいです。

まだまだ、ぼんやりしているところが多いと自明していますが、グローバル化のなかを生きる外国人と母国話者同士の交流をたとえささやかやところからでも支えられる研究にできればと思います。


程 琳

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