2009.02.12

【私とylab、この一年】自問自答と試行錯誤(坂本)

【クローズアップ教材】が一回りし、このメンバーでblogを更新していく
今年度最後のシリーズとなりました。
そんな今年度最後となるテーマは【私とylab、この一年】と題しまして、
メンバーがそれぞれの目線で4月からの1年間を振り返ります。
特にその中でも、修了を間近に控えた僕らM2の3人は、
修士2年間の出来事を振り返りたいと思います。

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毎度トップバッターの坂本は、
自分が2年間で修論を進めていった過程を振り返りたいと思います。

山内研では、週に1回ゼミが行われ、研究進捗の発表は
一人につきだいたい月に1回のペースで回ってきます。
ゼミと各自の研究相談を通じて、メンバーそれぞれが自分のテーマを決めていきます。
修士2年間の大まかな流れとしては、
M1の1年では研究計画をしっかりと立てることが、
M2の1年ではその研究計画を着実に実行していくことが、
大きな目標として設定されています。

そして、みんなそれぞれの年に苦しい時期があります。
僕の場合は、1年目はテーマの焦点化、2年目は研究の方法論でした。

■修士1年目
研究計画を立てるとき、土台となる問題点が絞られていないと
地に足がつかない研究になってしまいます。
僕の興味・関心は入学当初から漠然としており、
ゼミで発表する度に「何が言いたいのかわからない」
「問題意識は何か」とずっと問われてきました。
協調学習や教師の支援方略に興味があることは自覚していたのですが、
ただ「おもしろい」と思うだけで、そこに「もっとこうしたらいいのに」とか
「こういう場合はどうなるんだろう」といった問題意識が薄かったのだと思います。

そんなM1の時期にまず与えられる課題は、「とにかく文献を読んでくること」です。
僕は少しその期間が長かったように思います。
読んでまとめてきては足りないところを突っ込まれの繰り返しでした。
協調学習の面白さだけに着目していた頃は、
協調学習の問題点には目がいきませんでした。
本来、効果的な協調学習を実現するためには、その問題点を認識しつつ、
それを避けるようにデザインしなければならないのです。
協調学習に限らず、関連する様々な分野で同じことを繰り返していく
というサイクルが続きました。
その間は、ただ文献を読むだけでは時間だけが過ぎていきます。
読むたびに自分の興味・関心と照らし合わせ、
「共感するもの、納得いかないものがあるか」「あるならそれはなぜか」
ということを常に意識していました。

では、いつテーマが決まったのか。
それは本当に何気ない一瞬でした。文献を読んでいるとき、
ある時ふと「ScaffoldingとFading」の関係性にたどり着いたのです。
M1の1月頃だったでしょうか。

山内研では、「研究のヒラメキ」が起こることを、「神がおりてくる」と言います。
そのときの瞬間を僕にとっての「神」と言っていいのかどうかはわかりませんが、
Fadingのプロセスに関する研究は行われていないことに加え、
個人的な興味・関心としても、学習者側の行動である「学び」と
支援者側の行動である「支援」が結びつく、納得のいくテーマでした。
そしてそこに絞った研究計画を書き、
先生の「うん、いいでしょう」という言葉をもらったのでした。

■修士2年目
もちろん、それで万事解決ではありません。
研究計画は「計画」でしかないばかりか、
その計画でさえもロジックや概念の整理には
まだまだ甘いところがたくさんありました。
M2の1年では、それを詰め、実行していくプロセスに入ります。

問題意識がクリアになっても、それを実現するためには
「研究の方法」がしっかりしていなければいけません。
何をするにも初めての出来事。
こればかりは本を読むだけではうまく行きませんでした。

僕の場合、インタビューの質問項目を考えるのが一つ目の大きな壁でした。
示唆に富む「分厚いデータ」を収集することができる質問項目を考えるのには、
何回も試行錯誤を繰り返しました。
実際の教育現場へフィールドワークに行かせていただき、
質問項目を考えては作り直しながらヒヤリングをしました。
インタビューの質問項目がある程度決定したら、
本当にそれで問題ないかプレインタビューをお願いしたりもしました。

質問項目ができあがり、本番のインタビューに入っても、
それを分析するのにまた大きな壁にぶちあたりました。
インタビューで収集した先生方のデータはすごく面白いのですが、
研究結果として手続き的に分析していくのに、ものすごく手間取りました。
分析は、「誰がやっても同じ結果になる」ように、手続きを明確にし、
機械的に進めなければいけません。
でも僕は、どうしても自分の頭の中で解釈してしまい、先に進めませんでした。
最後は結局、山内先生に手取り足取り指導していただきながら分析を進めました。

山内先生は、研究には「新しい学びの形を創りたいという『問題意識』と、
アイデアを実現するための『道具』」が必要であるとおっしゃいますが、
僕は十分な「道具」を持っていなかったのだと痛感しました。

研究方法に関する議論は、突き詰めると本当に複雑で多岐にわたっているので
ここで軽々しく扱えるような内容ではないのですが、
先生に助けてもらいながら分析を進め、なんとか結果を形にすることができました。
先日も現場の先生方の前で研究内容を発表する機会に恵まれ、
発表後、本当に嬉しい言葉をたくさんいただきました。
お世話になった先生方に恩返しがしたいという気持ちでやってきたので、
ここまで頑張ってきてよかったと心から思えました。

■修士研究を終えて
もちろん、修士研究が形になったことで全てが終わったわけではありません。
研究をしていると、知るたびに余計訳がわからなくなることがたくさん出てきます。
その連鎖で、これまでゼミで学んできたことや前に読んだ本の内容、
授業で学んだ内容、飲み会のときに先生や先輩が話していた内容ががリンクし、
「わかってはわからなくなる」を繰り返していくのだと思います。
山内先生は、
「『神』はいつおりてくるかわからないけど、努力しないと絶対おりてこない」
と言います。
その、何かと何かがリンクする瞬間に、「神」が隠れているのかな、なんて思ったりもします。

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秋以降、山内研には、来春から仲間入りする"M0"が出入りするようになり、
いよいよ世代交代の季節が近づいてきた、と感じます。
M0のみなさんは、これから、研究がうまく進まなかったり、
授業との両立が難しくて疲れてしまうことがあるかもしれません。
それでも、同じ学年の仲間とともに力を合わせたり、
同じ経験をしている先輩たちからアドバイスをもらったり、
先生やスタッフのみなさんから、厳しいけど的確で暖かい励ましをもらいながら、
修士研究が完成したときの喜びは何事にもかえられません。
「神」に出会うのに必要な努力を続けるためには、
仲間の存在がとても大きいように思います。

これからも、山内研のみなさんから
興味深い研究がたくさん生み出されることを期待しております。
僕もまた、わかり続けるための連鎖を途切れさせないよう
学び続けていきたいと思います。

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