2008.04.23

【今年の研究計画】ワークショップのデザインの熟達化における変容の契機に関する研究

 こんにちは。今週の担当、山内研究室 博士課程2年の 森玲奈 です。
 山内研究室に入って早4年目。様々なバックグラウンドの仲間たちに刺激を受けつつ、日々楽しい研究生活を送っています。
 では、私自身はどのような研究をしているのか。簡単にご紹介したいと思います。


■ワークショップってなに?
 皆さんは、どこかで「ワークショップ」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?
 ご存知の方は、どんなイメージを持たれているでしょうか?

 ワークショップとは、もともと「作業場」を意味する英語でしたが、ここ数十年の間に、学びのための新しい方法として実践が行われるようになりました。
 ワークショップに関してはいくつか本が出されていますが、入手が簡単なものに、中野民夫さんの書かれた「ワークショップ」(岩波新書)があります。そこでは、ワークショップは「先生や講師から一方的に話を聞くのではなく、参加者が主体的に議論に参加したり、言葉だけでなくからだやこころを使って体験したり、相互に刺激しあい学びあう、グループによる学びと創造の方法」と定義されています。この手法の使われる領域は現在多岐に渡っており、非常に注目されています。
 実践のニーズが高まっているということは、そのような人材を育成することも考えていかなくてはならないということ。しかしながら、人材育成に関する研究がなされていないという現状が、私はとても気になりました。


■ワークショップを実践する「ひと」
 人材育成について考えるためには、まず、ワークショップ実践を行う人(以下、実践家と呼びます)が他の人とどのようなところが違うのかを知る必要があります。この違いこそが、実践家の「専門性」だと考えられるからです。
 ワークショップ実践を行う人には(1)企画を立てる(2)コーディネートする(3)当日の運営をする、という3つの役割があると言われています。私はこの役割の中でも、そもそものスタートである、「企画を立てる」(以下、ワークショップのデザインと呼びます)に注目することにしました。
 ベテラン実践家はどんなふうにワークショップの企画を立てているのか?この問いにアプローチしたのが修士研究(『学習を目的としたワークショップのデザイン過程に関する研究』日本教育工学会論文誌 第31巻 第4号 (2008) に掲載されています)でした。
 しかしながら、ベテランのとっているデザイン方略がわかっただけでは、実践家育成には十分ではありません。なぜならば、ベテランの持つ専門性が、いかにして獲得されたのかが、解明されていないからです。そこで、標題に掲げた新しい研究がスタートしたわけです。


■実践家はどうやって今に至ったのか
 ワークショップ実践家はどのようにしてベテランになっていくのか、すなわち熟達過程に関して調べるために、今回の研究では経験5年を越える方から経験20年以上の方まで、19名の方にご自身のキャリアに関するインタビューをさせていただきました。
 インタビューをする際、要として考えたのは、「デザインの仕方の変容」です。ご自身が自覚されている変容の時期をご指摘いただいた上で、その前後にどのようなことがあったのか、エピソードを語っていただきました。なお、インタビューの前に、実践家の方に、ご自身のキャリアヒストリーを年表にしていただくという作業を挟むことで、記憶の再生を促しました。


■インタビューを通じて「研究者としての私」のこれから
 対象者へのインタビューは終了しました。現在、取得したインタビューデータを文字化し、試行錯誤しながら分析しているところです。データ間の比較を行うことで今までわからなかったことへの仮説が浮かび上がってくるので、少し作業は大変ですが充実した時間を過ごしています。
 インタビューという手法は、研究者だけではなく、様々な方が使っている、非常に素朴な方法です。必要な機材はICレコーダーだけです(笑)。でも、研究として行うからには、インタビュー対象者ご自身が普段意識せずにいたようなことが少しでも明らかにできたら、と思っています。そして、人材育成環境をデザインする上で有用な提案ができたら、と思っています。

 これからも未熟ながら、地道に研究を進めていきたいと思っておりますので、あたたかく見守っていただければ幸いです。
 拙い記事に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


 

[森 玲奈]

PAGE TOP