2008.04.10
4月より修士課程に進学しました岡本絵莉といいます。
3月に京都大学文学部の基礎現代文化系情報・史料学専修を卒業し、山内研究室にやってきました。
今日は私の研究計画についてご紹介します。
●研究テーマ(案)は?
“いきいき”した大学研究室環境のデザインに関する実践研究
●研究の概要は?
大学の研究室を対象に、ワークショップを企画・実行します。
こうした実践を通じて、大学研究室のメンバー全員が“いきいき”して研究活動に邁進できる研究室環境のデザインに関する評価を行います。
●研究の背景は?
「大学の研究室」について、みなさまはどのようなイメージをお持ちでしょうか。
実は「研究室」という正式な組織は存在しないのですが、教員の下で複数の学生が教育を受け、研究活動を進める共同体を、ここでは「研究室」と呼ぶことにします。この研究室こそが、大学という巨大な組織の中で、研究やその成果の還元、教育といった重要な機能を果たす実質的な単位です。しかしこの大学研究室が、学問分野の細分化や縦割り制度の中で閉鎖的な組織になりがちであるという批判があります。研究室を統括する大学教員自身も、研究活動はもちろん、大学の運営業務や研究資金の獲得で多忙である場合がほとんどです。そもそも大学教員の多くは「研究者」として経験を積んできたにも関わらず、教育者・運営者といった全ての力を要求される現在の構造自体に問題があるのかもしれません。こうした状況の中で、大学の研究室に関する様々な問題が起こっています。だからこそ、研究室のメンバー全員が“いきいき”として研究活動に邁進できるような研究室環境のデザインについて考えることは重要であると考えています。
●研究の方法は?
企画したワークショップを、実際に大学の研究室において開催します。ワークショップの内容は、今のところ「研究室のアイデンティティ形成ワークショップ」「研究室の知識共有促進ワークショップ」「研究とは何かを理解しようワークショップ」などを考えています。
●評価の方法は?
本研究計画において評価を行いたいのは、「“いきいき”して研究活動に邁進できるような研究室環境のデザインに役立ったのか」という点です。しかしこれをそのまま検証することは困難であるため、たとえば以下のような項目を検証することを考えています。
・学生の研究テーマ決定までの時間が短くなったか?
・学生がひとりで悩んでいる時間が短くなったか?
・学生が、研究に必要となる基本的な技術が身を身につけたか?
・研究室内に、研究について気軽に議論する場や、協力し合う雰囲気が生まれたか?
・教員が学生の基本的な指導に使う時間が減ったか?
●さいごに
なぜ私が大学研究室についての研究を行いたいと思ったのかについて、書きたいと思います。
私は縁があって学部生の頃から研究者支援のNPO等に関わり、大学の研究者や研究室と接するチャンスがありました。その中で「自分の研究に熱中できる人」や「自分の研究室の文句を言う人」、「研究室の外に出て積極的に活動する人」はたくさんいましたが、自分が幸せに研究を行うための環境について考え、そこに働きかけようという人はあまりいないと感じたのです。だからまず周囲の方と協力して、大学の研究室に対する実践活動を始めました。こちらは現在も継続中ですので、興味のある方はご覧いただければ幸いです。(http://www.ikiiki-lab.org/) しかし、行き当たりばったりな実践をするだけではなく、それについて多角的に考察し、学術的に検証したいと思いました。それが、私が修士課程で本研究を行いたいと思った理由です。現在も計画を練っている途中の研究計画であるため、検討が必要な点も多々ありますが、前向きなトライ&エラーを重ねていこうと決意しています。