2008.04.02

【今年の研究計画】プレゼンテーション・ソフトウェアと配布資料をキーワードに

 今年度より研究室で学ばせていただくことになりました大城と申します。

 私の研究テーマは目下模索中のため、正直なところ研究計画も未定なのですが、いくつか関心のあるキーワードがあります。今回は以下のキーワードのうちプレゼンテーション・ソフトウェアに関心を持つ理由について説明させていただきたいと思います。

1. プレゼンテーション・ソフトウェア
2. (1.を用いたプレゼンテーションを行う際に作成する)配布資料

■効率的で幅広い情報伝達が可能に

 プレゼンテーション・ソフトウェアには、情報量が多いという利点があると考えられます。授業という場を切り口にしてみても、黒板による講義と比較して、プレゼンテーション・ソフトウェアは、短時間に大量の情報を効率的に伝達することを可能にした点で、非常に画期的であると言えます。

 しかも、その「情報」の幅も広がりました。かつては黒板とチョークで書く以外には、模造紙やポスター等の静止画しか用いることができなかったのが、今やそれに加えて動画、音楽、さらにはインターネット上の情報を扱えるようになり、かつ、それらのさまざまな情報を、PCの画面上で瞬時に切り替えてスクリーンに提示することができるようになりました。

 しかし、いくつかの疑問もわいてきます。

■情報量の多さ

 1つ目は、本当に便利になったのか?ということです。確かに、プレゼンテーションを行う側にとっては効率的に伝えたい情報を伝えられるようになった点で大変便利になったと言えます。しかし、プレゼンテーションの受け手にとってはどうでしょうか。

  「情報量が多いこと」は、聞き手にとってメリットであると同時にデメリットともなることが考えられます。次々に新しいスライドが提示され、視覚的な刺激の多いプレゼンテーション・ソフトウェアは、聞き手に分かりやすいとも捉えられていますが、それには「分かったつもり」という感覚も含まれています。伝達される情報量の増加は、その内容の理解を深めることにただちにつながるとは言えません。

■突き詰めればスライドショー

 そしてもう1つの疑問があります。本当に情報の幅は広がったといえるのでしょうか?プレゼンテーション・ソフトウェアによって多様な形の情報を効率的に扱うことが可能になりましたが、突き詰めれば一方向的に情報の提示されるスライドショーであることに変わりはありません。これは、ある種の型であり、見方によっては制限であるとも言えます。むしろソフトウェアを用いない表現(話し手自身の語り、ジェスチャーなど)に、プレゼンテーションの面白さ・分かりやすさが表れていることもしばしばあります。

■既存のテクノロジーの使い方

 今まで述べてきたプレゼンテーション・ソフトウェアは大学の教育現場で広く普及しつつあり、すでにあって当たり前、使って当たり前のありふれたテクノロジーの一つになりつつあります。しかしながら、それと同時に、テクノロジーの良さをどう活かし、弱さをどう補強していくかという議論も広がっていかなければならないと思います。

 プレゼンテーション・ソフトウェアを用いて何らかの意図を持った説明がなされる際、聞き手の中で何が起こっているのか、話し手が聞き手に望むような内容理解がどの程度達成されているのかについて、話し手によって作成される配布資料という道具に焦点を当てながら、考えていきたいと思っています。

[大城 明緒]

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