2008.03.15

【今年の研究計画】ベテラン実践家によるワークショップデザインに関する研究ー実践家が捉える「場」の利用可能性ー

■「ワークショップ」とは
ワークショップという言葉を聞いた事がありますか?
ワークショップを見かけた事がありますか?
ワークショップに参加した事がありますか?
ワークショップをお手伝いしたことがありますか?
ワークショップのファシリテーションをしたことがありますか?
ワークショップをデザインしたことがありますか?

ワークショップとは、「講義など一方的な知識伝達のスタイルではなく、参加者が自ら参加・体験して共同で何かを学びあったり創り出したりする学びと創造のスタイル」(中野,2001)です。
体験をもとに私の言葉に翻訳してみると、参加して、体験して、ちょっと自分の壁を壊したり、いつもは開かないようなところをオープンにしてみたり、そうこうしているうちに夢中になって、後から振り返ってみると、あれ?これってもしかして…という、ちょっとだまされたような、でもそれが心地良かったりする学びのスタイルです。

■学びの場
ワークショップでの学びには何か決まった形式があるわけではなく、参加者が実際に体を動かしたり、何かを作ったり、話し合ったり、発表したり、といった体験によって得られるものです。
参加者一人一人が何を得るかは、その人次第です。
何か一つのことを一方的に伝達するのであれば、教師と向き合って整列した人たちに教えるのが一番適している、効率的であると言えるかもしれません。
ところがワークショップでの学びは、「○○について全員に教えなければならない」というスタイルではありません。
ワークショップの実践家は活動をデザインすることはもちろん、それをどんな場で行うのか、どんな道具を使うのか、それをファシリテーターがどんな風にサポートするのか、などということを含めて総合的に「学びの場」を創り出しています。
まるで、それまで静かにおとなしくしていた空間が命を吹き込まれ、日常とは異なる場へと変えられるようです。

■「使い方」のデザイン
ところで、私は山内研究室にくる以前、建築学科というところにいました。
建築が作られる時に、この場所はこんな風に使われるだろう、使ってほしい、という意図があると思いますが、一方でそれが使い手に伝わらない事も多々あるのではないでしょうか。
もちろん、使い手が創造的にその空間を使うということは、とても魅力的なことだと思います。
でも、送り手と受け手の隙間を、もう少し埋めてもいいのではないかと、建築学科にいた頃の私は考えていました。
ワークショップの実践家達は、与えられた空間に「可能性」を見出し、そこでの活動をデザインし、その空間にいきいきと人が居る「状況」をデザインしています。
彼らは必ずしも空間の専門家ではないけれども、豊富な経験から、空間の利用可能性という送り手からのメッセージと、使い手(参加者)の動き方、反応、思いをつなげる存在であると言えるのではないでしょうか。

■ベテランの「頭の中」
ミュージアム、学校、大学、まち、企業などなど…「ワークショップ」という言葉を耳にする機会が増え、美術館、公民館、教室、体育館、会議室、スタジオ、カフェ、など、様々な場所がこの新しい学びの舞台となっています。

私は、ある空間がどのようにして学びの場、学びの舞台となっていくのかというプロセスに関心があります。
そこで、ベテランのワークショップ実践家のデザインプロセスにおける、「頭の中」をのぞいてみたいと思っています。
彼らがワークショップをデザインする際に、与えられた空間をどのように捉えているのか、その上でどんな活動をデザインし、場をしつらえていくのかということを明らかにしたいと考えています。
私は「場」と「活動」は切り離せない、相互に影響し合う関係だと思っています。
実践家が、どのようにしてその関係性を作っているのか、その関係の間を行き来しているのかということを追究してみたいと思います。
ベテラン実践家の「頭の中」を明らかにするため、Think Aloudという手法を用い、できたばかりの福武ホールで実験を行う予定です。

[牧村真帆]

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