2007.11.06
今月号のGA JAPAN 89に福武ホールの施工についての記事が掲載されています。その中に気になる一節がありました。
打ち放しがなくなる!?
安藤 「東大の現場では、まだ職人の力が生きていると思いますが、正直なところ、現場打ちのコンクリートはなくなっていく流れにあると思います。賃金も安いし、このまま合理化が追求されると、いい職人は生き延びていけません。以前と同じことをやっていても、単価が上がってしまい、クライアントの負担も大きくなります。
<中略>
◆実際に、施工の現場ではかなり職人さんが減っているのですか?
朝日 人数が減っているのは事実ですね。その結果、これまで考えていたような工期を計画しても、人数が集まらずスケジュールを変更せざるを得ないということは実際に起こっています。また、工業製品を使うような形に変えざるを得なくなるケースも増えると思います。
安藤 我々はそこまでの状況には直面していませんが、大工、左官、配筋工などの職人の高齢化も進んでいて、もう五年もすればいなくなってしまうんじゃないかと思うくらいです。
岩間 特殊技能を存続させるという意識をきっちり持っていないと、技術の伝承がなされないまま、日本の建築界は大変なことになってしまうのではという気すらしています。
(GA JAPAN 89, pp137)
私もこの建物に関わるまで、打ちっ放しのコンクリート建築が職人技によって支えられていることを知りませんでした。見た目がシンプルなだけに機械的にできそうな感じを受けますが、実は職人の高度な技によってのみ実現できるものだったのですね。
生産や流通の環境が激変する中で、職人技的な特殊技能が滅びていくという話はいろいろな領域で聞きますが、こんな身近に起きているとは意外でした。
[山内 祐平]