2007.10.23

【エッセイ】教材の説明責任

教育学部の授業「学習環境のデザイン」は、今年学部横断型教育プログラム:メディアコンテンツのひとつとして、デジタル教材をレビューしています。今週は、フードフォース(Food Force)をとりあげました。
フードフォースは、国連の組織である世界食糧計画が作ったシリアスゲームで、インド洋に浮かぶ島であるシェイラン島で大規模な災害が起きたときに、緊急食料援助するために以下の6つのミッションをこなす必要があります。

1) 空からの偵察:上空から食糧援助を求めている人を把握する
2) 食糧の調合:栄養のあるバランスの取れた食糧を作る
3) 食糧投下:空中投下による食糧援助
4) 食糧の調達と搬出:食糧供給網を完成させる
5) 食糧の輸送:トラックで食糧を届ける
6) 復興支援:成長と開発のプログラムを行なう

それぞれのミッションは実際に行われた食料援助を参考にして作られており、食料援助が困難な仕事であることが理解できるようになっています。フードフォースは、コナミが日本語版を作っており、以下のアドレスからフリーでダウンロードできます。
http://www.foodforce.konami.jp/download.html

授業では、教材をデモしてもらった後で、ディスカッションをしましたが、多くの人が、ゲームとして成立させるために「世界を作り込んでいること」に危惧をもっているようでした。
ゲームに限らず、シミュレーション教材は、それが現実と対応しているのかどうかが常に問われます。フードフォースは実際の援助経験からモデルやアルゴリズムを引き出しているのだと思いますが、すべてのシリアスゲームがそうであるとは限りません。
シリアスゲームの傾向として、広報目的に使われるものが多いということがあります。(選挙運動に使われているものもあります)
シリアスゲームが教育的価値を持つことを主張するためには、その背景にあるモデルや情報をできるだけ公開し、説明責任を果たすことが必要な時代になってきているのではないかと感じました。パッケージ型の教材は中の動きが見えなくなります。ソースコードを公開したり、資料とモデルの対応を説明したサイトを用意することによって、ユーザーの懸念はかなり減らせるように思います。
[山内 祐平]

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