2007.08.17
柴田義松 (2006) 「ヴィゴツキー入門」寺子屋新書
現代において教育/学習を研究しようとするものが,ヴィゴツキーを知らない,という訳にはいかないでしょう.さまざまな研究を行っている山内研究室の中でも,ヴィゴツキーへの言及は多く為されます.ヴィゴツキーを避けてはなかなか通れない.
ただし,ヴィゴツキーの理論はとても美しい一方で,難解な部分もあります.日本語訳が手に入りますが,なかなか原著は手強いです.
そんな時の1冊として,今回はヴィゴツキー研究の第一人者でもある柴田義松先生の「ヴィゴツキー入門」をお勧めしたいと思います.
ヴィゴツキーの生い立ちから始まる本書は,単にヴィコツキー理論の解説に終始するのではなく,時代背景を追いながら,他の理論や研究者との違いを丁寧に示してある点で,とてもわかり易いものとなっています.
例えば,ヴィゴツキー理論の中でも外言と内言の関係や,それに基づいた発達の最近接領域は重要な部分です.これらがピアジェの言葉,ピアジェ理論との違いから説明されることで,とてもわかり易くなっています.
また,現在広く入手可能なヴィゴツキーの日本語訳は,多くが柴田先生によって訳されたものである点も,入門書としての本書の価値を高めるものとなっているでしょう.
事実,僕自身もこの本を読んだ後に「思考と言語」がより良く読めるようになったと感じました.
故波多野誼余夫先生が,これからの学習研究においては,認知メカニズムと,社会/文化的な要因がどうか関わっているのかをより明らかにしていくことが大事だと仰っていました.本書を読む度,私自身もそんな研究が出来ればと思います.そんなことを考えさせてくれたりする,そんな本でもあるのかもしれません.
[三宅 正樹]