2007.08.04
突然ですが。
一見つまらないように見えることでも感心したり感動できる。
自分のことをつきはなして観察できる
ある程度いい加減でずぼらだと思う。
ある程度シツコクてクドイ方だと思う。
あなたは、いくつ当てはまりますか?
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佐藤郁哉(1992) フィールドワーク:書を持って街へ出よう,新曜社,東京
冒頭の問いかけは、フィールドワークに向いている人の特徴として本書に挙げられているものです。著者である佐藤郁哉氏は、フィールドワークを行う社会学者として、また日本における定性的な研究の第一人者として著名な方です。
本書にはフィールドワークとは何か、またフィールドワークの客観性は?というようなわれわれが素朴に感じる疑問に対する筆者の見解が、わかりやすく、丁寧に書かれています。また、考え方の話のみにはとどまっておらず、技法論ともいうべきノートのとり方やハードウェアの使い方も解説されています。巻末の参考文献リストも充実しており、利用価値の高い1冊です。日本語で読める定性的(質的)研究法の優れた教科書と言えると思います。
ここで、「定性的(質的)研究法って何??」と思われた方・・・
ぜひ読んでみてくださいね。
でも、あくまで本書の著者は定性的研究法サイドの社会学者です。その辺りは注意してください。つまり、この本を読んだら、やっぱり定量的研究法の本も読んでみてほしいのです。
あなたが知りたいことは、どんな方法を使って調べることができそうか。それを知るためためには、まず、どんな研究方法があるのか。そのバリエーションを知ることが大切だと思います。
研究法はよく、「道具」というメタファーで語られます。
私は、入学したばかりのころ、「魚をさばくのにノコギリ使っちゃだめだ」と言われました。そう。切れれば良いってものじゃないですよね。でも、両方の特性を把握していないと、使用する際にどちらの道具がより適切か、判断できません。そういった意味で、本書は、インタビュー調査やフィールドワークを行う人はもちろん、定量的研究法を多用する人も、自分の研究を相対化する意味で非常に示唆に富んだ本です。
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ちなみに、この本を読んで面白かったら、著者による実際の研究成果を読まれてみることもお薦めします。邦語では『暴走族のエスノグラフィー』や『現代演劇のフィールドワーク』(日経経済図書文化賞受賞)があります。また、『フィールドワークの技法:問いを育てる、仮説をきたえる』では、常に葛藤しながら研究に取り組んできた反省的実践家としての佐藤郁哉氏を垣間見ることができます。
※なお、本レビューは上記出典へのものですが、現在では新項目を追加した『フィールドワーク 増訂版』が(2006年12月刊行)が販売されています。