2007.08.14

【エッセイ】我が青春のHyperCard

先日飲み会でMacの話をしていたら、ほとんどの人がHyperCardを知らないということに気づいて、少々ショックを受けました。

「HyperCardは、ハイパーテキストを実現した最初の商用ソフトウェア。1987年にアップルコンピュータのビル・アトキンソンが開発した。Macintoshで動作し、ゲームの制作、簡単なプログラムの開発等に利用される。
ハイパーテキストのノードとしてカードを用い、カードとカードをつなぐリンクとしてはボタンを用いる。カードの上にはボタンの他にテキストやグラフィックをおくことができた。プログラムを記述するにはHyperTalkと呼ばれるスクリプト言語を用いる。 ボタンを押すと各ボタンに対応付けられたカードにジャンプするか、HyperTalkで記述されたプログラムを実行する。HyperCardを使えばプログラムを直接記述しなくても簡単なアプリケーションを作ることができたので、マルチメディアオーサリングツールとして使用された。」(Wikipediaより引用)

Hypercard.gif

今では、リンクをたどりながら情報を探索していくことはウェブの専売特許になっていますが、1987年にはまだウェブは存在していませんでした。(最初のブラウザであるNCSA Mosaicが開発されるのは1992年です。) ウェブが日常化した今では想像もつかないような話ですが、20年前には全く異なった情報環境が存在していました。それがHyperCardです。
HyperCardはカードに埋め込まれたボタンで情報を探していくという意味ではウェブブラウザーに近いのですが、裏側にHyperTalkという言語が組み込まれており、一種の開発環境でもありました。今の感覚だと、ウェブとFlashとカード型データベースをあわせたような感じです。
HyperCardはとっつきやすい開発環境だったので、多くの教員が自分たちで教材を作るようになりました。ネットがなかった時代、彼らはユーザーグループというコミュニティを作り、フロッピーディスクで自作の教材を交換していました。これは一種のオープンソース、クリエイティブコモンズ的な発想といえるでしょう。
しかも、HyperCardは奥が深い開発環境で、外部コマンドを使うことによってハードウェアを制御することもできました。このため、教材開発の専門家もこのツールを愛用していました。
かくいう私も、修士論文で、子どものマルチメディアプレゼンテーションの設計過程を支援する"Presentation Designer"という環境を作りましたが、これはHyperCardをベースにしたものです。
現在30代後半から40代後半の世代で教材開発に関わっている人は、HyperCardに育てられたといっても過言ではないでしょう。
時は過ぎ、HyperCardは忘れ去られ、時代はウェブやFlashに移りました。しかし、HyperCardに熱中した世代は、いまだにデジタルな世界に新しい風を吹かせたいと努力している人が多いように思います。HyperCardは、まだ彼らの心の中に生きているのかもしれません。

[山内 祐平]

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