2007.04.18
『ワークショップー新しい学びと創造の場ー』中野民夫著 岩波新書,2001
ワークショップに参加したことがありますか?
最近では、学校や美術館、まちづくりなど、ワークショップという言葉を耳にする機会も多いと思います。
本書は、ワークショップとは何か、ワークショップの実際、ワークショップの意義、ワークショップの応用、の4章から成り、著者が参加した、或いは企画、運営に関わった多くの具体例を挙げながら、「新しい学びと創造の場」であるワークショップの魅力や可能性を紹介しています。
著者はワークショップを「講義など一方的な知識伝達のスタイルではなく、参加者が自ら参加・体験して共同で何かを学びあったり創り出したりする学びと創造のスタイル」と定義しています。
ワークショップでは、主体的な「参加」、頭だけでなく身体や心をまるごと使った「体験」を大切にします。それは、従来の教育で一般的な、教える側から学ぶ側への一方通行ではなく、双方向的な学びのスタイルです。
体験談の中には、ワークショップという手法の中にあるエッセンスがたくさんちりばめられています。
一人で感じる、二人でペアになって体験する、グループで話し合う、全体で発表するなどの活動形式や、話を聞く、自ら話す、身体を使って動く、静かに感じるなどの様々な活動の仕方を行き来することは、個人の学びを深めるだけでなく、その場全体としての相互作用を生み、将来の持続的な学びへとつながっていく可能性を持っているようです。
また、他者の話をじっくりと最後まで聞くこと、自分自身にも耳を傾けること、他者の意見を批判しないこと、唯一の正解を求めないこと、自分の言動が場を動かすことを知ること、などといった態度が求められるのは、ワークショップという場だけではないと思います。
著者は、ワークショップにももちろん限界や注意点があると述べた上で、社会の様々な分野で応用することができるとしています。
ワークショップをデザインする人、ワークショップに参加したい人、参加したワークショップを振り返りたい人、会議や活動にワークショップ的な要素を取り入れたい人…。様々な視点から学ぶことができる本ではないかと思います。
ワークショップに参加したことのない人は、机の上で一人なるほど…と読むよりも、実際に一度ワークショップに参加してみてから再度読むと、具体的な体験と結びつけて感じることができていいのではないかと思います。
ワークショップは「参加体験型」の学びのスタイルですから。
[牧村真帆]