2007.02.01

【Book Review】「素人のように考え、玄人として実行する」

金出武雄(2004)『素人のように考え、玄人として実行する』PHP研究所

「なにか困ったときに、ふと手にとってみると、その答えが書いてある」という体験をさせてくれる本はいくつかありますが、今回紹介する本は、そんな本の1つです。

この本はロボット工学の研究者である著者が、「問題解決の方法」について書いたものです。内容は、著者自身の経験から、考え方のコツや、そのときのメンタル的な部分まで幅広く書かれています。

「考え方」について書かれた本というのは、いくつかあると思いますが、この本の主要なメッセージというのは、シンプルでありつつ、強力です。それはタイトルにまさに集約されているのですが、ポイントは、

・発想は、単純、素直、自由、簡単に(素人のように)
・実行は、知識と習熟した技で(玄人として)

ということです。本の中で紹介されている方法や、考え方は、基本的にこのアイデアが元となっています。

例えば、その中の一つに「キス(KISS)アプローチ」というものがあります。KISSとは、"Keep it simple, stupid"の頭文字です。意味は、「こら、簡単にやれ!バカモノ」ということらしいのですが、もっとストレートにいえば、「ごちゃごちゃ言わずにやれ」ということのようです。

これは、なにかをやり遂げる前に「できないこと」をいろいろ想像して前に進まない学生に対して言うそうです。つまり、やる前に思い悩んでいてもなにも進まないが、それをやってみることで「何が難しいか」がわかることもある。つまり、簡単に一歩目を踏み出すことで、困難な点が明らかになってくるということを示しています。

「素人発想、玄人実行が大切だ!」とわざわざ書いていたり、なるほどと思うのは、人は得てして、その反対の「玄人発想、素人実行」になりがちだからだと思います。

自分自身を振り返ってみても、まさにそうなっている部分というのが多々あります。学部3年のときに買ったこの本を、なぜかいまごろ手を伸ばして読み直しているのも、こうした反省からかもしれません。

「素人のように考え、玄人として実行する」

当たり前のようでいて、難しいこの言葉ですが、自分の考え方、問題解決の仕方がうまくいっているのかを振り返るときに、ひとつのよい指標となるのではないでしょうか。みなさんにおすすめというよりも、自分自身にたいしてのメッセージが強い気もしますが、この本は研究活動をしていく上で、基本になる一冊のように思います。

[舘野泰一]

PAGE TOP