2007.02.08
トム・ケリー&ジョナサン・リットマン 鈴木主税・秀岡尚子訳(2002)
『発想する会社!-世界最高のデザイン・ファーム・IDEOに学ぶイノベーションの技法』
早川書房
だいぶ前にコピーライターで劇作家の知人の方に紹介していただいた本。
「こんな風にものづくりができたら楽しいだろうなあ」という話が、たくさんのカラフルな写真とエピソードとともに描かれており、とても刺激的な本です。
IDEOは、古くはマッキントッシュの初期のマウスをデザインしたほか、歯磨きのチューブ、ラップトップコンピュータ、医療機器、マウンテンバイク用のウォーターボトル、子ども用歯ブラシ、玩具、鉄道車両など、「機能的で遊び心に満ちた」デザインで名をとどろかせている会社です。クライアントも、アップル、パーム、プラダ、ペプシ、ピクサー、P&Gなど。最近では「なぜIDEOではクリエイティブなデザインが生まれるのか」と、この会社そのものが注目を集めるようになっており、今では“働き方そのもの”をコンサルティングするようなことまでやっているそうです。
難しい理屈ではなく、実例が豊富なのがこの本の良いところです。写真も装丁もきれいで、眺めているだけで楽しい。「コミュニティ・オブ・プラクティス」や「企業内人材育成入門」のようなちょっと硬めの本を読む前に、こういう柔らかい本にざっと目を通しておくと、理解がぐっと深まるのではないでしょうか。
IDEOのメンバーはみんなイタズラ好きで、この本に収められたエピソードひとつひとつから、会社の生き生きとした雰囲気が伝わってきます。多くの日本の企業に勤める人にとって、このような働き方は斬新を通り越して、ほとんど革命的なのではないでしょうか。
もちろん「プロダクト・デザイン」という職種だからこそできることもあるのだと思いますが、ここに描かれている、自分が選んだ仕事・プロジェクトとの向き合い方、その構えのようなものは、どんな仕事をしている人にも(もちろん研究者にも)、適用できるものであるはずです。[平野智紀]