2006.11.16

【Book Review】「人はなぜコンピューターを人間として扱うか」

人はなぜコンピューターを人間として扱うか—「メディアの等式」の心理学バイロン・リーブス著 クリフォード・ナス著 細馬 宏通訳 (2001)

今回紹介する本は、学部のころに読んだ本の中で、とても印象に残っている一冊です。

この本の内容は、タイトルの通り、「人はなぜコンピューターを人間として扱うのか」ということについて書かれています。ふーんと思いますが、よく考えてみると変ですよね。

「そもそも、コンピューターを人として扱うなんてことがあるのかな??」

っていうことだと思います。僕もそう思います。しかし、私たちは無意識のうちに、コンピューターなどのメディアに対して、人間同士で行うコミュニケーションに似たふるまいをしているのだということを実験において明らかにしているというのがこの本の内容です。

具体的な例をひとつだしてみましょう。

例えば、人間同士のコミュニケーションを考えてみます。僕が授業などで発表をしたとして、「今日の発表どうだった?」ということを友達に聞けば、「ああ、よかったんじゃない」というような言葉が返ってくるかもしれません。それはある意味礼儀のようなものです。もし、僕じゃない人が聞けば、もう少し低い評価をするかもしれません。

この本が面白いのは、これが人とパソコンとの関係でも成り立つのかということを実験している点です。細かい実験の手順は省きますが、なにか作業を与えられ使用したパソコンの評価を、その同じパソコンを使って評価するときと、別のパソコンを使って評価するというときで、結果に差がでたというのです。

それはつまり、コンピューターに対しても、本人(作業したコンピューター)の前では、礼儀的に、低い評価を出さなかったということなのです。

これはひとつの例ですが、この本の中には、さまざまな実験がのっています。また、その実験の結果から、インタフェースのデザインなどにいくつも面白い指針を示しています。

こうした結果は、教育工学のような分野にとっても、非常に示唆的なものなのではないでしょうか。私たちは、必ずしも、「リアル」で「ハイテク」で、「高機能」なものだけに対して、対話的であるのではなく、もっと素朴ななにかについて、対話的にかかわりあっているということです。

こうしたうまいコミュニケーションができる道具というのを考えてみると、もっともっと使いやすく、面白いものがうまれてくるのではないでしょうか。

[舘野泰一]

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