2006.11.02

【Book Review】「社会科学のリサーチ・デザイン」

King , G. , Keohane, S. & Verba (1994) Designing Social Inquiry : Scientifitic Inference in Qualitative Research, Princeton Univ.Press : 真渕勝監訳(1997) 社会科学のリサーチ・デザイン:定性的研究における科学的推論, 勁草社


「学際的な研究」といっても、やはりどこかのが学問体系からの系譜があるわけで、その根っこにあるアカデミックな文化を意識しないで進めていくことはできない、と思う今日この頃。
そんなわけで、M1の冬あたりから、方法論の本をよく読むようになった。
今回、ここで紹介するのは、「科学的な研究の方法」について、示唆を与えてくれる本である。

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■著者たちと執筆の背景について

3人とも政治学者であるが、異なったアプローチで研究を行っている。
3人は、ハーヴァード大学政治学部での「社会科学における定性的分析の方法」という大学院の演習を共同で担当。本書は、そこでの学生たちとのやりとりなどを基にまとめられたものである。

■本書の書かれた目的

定性的な研究(数字による測定が不可能であったり望ましくないような研究)において、妥当な因果的推論や記述的推論を行うための統一的なアプローチを発展させることを目的としている。
また、定性的研究者に対して、科学的推論について真剣に考え、科学的な推論を自らの研究に取り入れるように促すことを目指している。

■こんな人に読んでほしい・・・
定性的なフィールドワークに従事する研究者から統計分析を行う研究者まで。
学部1年生からベテランの研究者まで。
政治学とは一見異なった形をとっている学問領域の人にも応用できる。

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「定量的」研究と「定性的」研究、この2つはかなり異なった、時には対立するもののような扱われ方をよくする。
しかし、筆者は、この2つを結びつけ、「両者の違いは主としてスタイルや具体的な手法の違いに過ぎない」と述べている。
さらに、科学的であるか否かを分けるのは、記述的な研究であるか因果に関する研究であるかではなく、妥当な手続きに従って推論が行われているか否かだ、と主張する。

この主張は私の日頃抱えているモヤモヤを、少しだけはらしてくれるものだった。

秋の夜長、この本を通して、何げなく使っている「科学」「モデル」「理論」「方法」といった言葉について、ゆっくり考えてみるのも良いのではないだろうか。

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