2006.10.19
「アンビエント・ファインダビリティ」 Peter Morville著 オライリー・ジャパン (2006/04)
「ファインダビリティ」という用語をこの本ではじめて目にしたのですが、非常に重要な要素だと思います。同書では「どんなに有益な情報がネットワーク上に存在していたとしても、ユーザが見つけることができなければ、何の意味もありません」と前置きをした上で、「ファインダビリティはユーザビリティに先行する」と謳っています。
内容としては、検索のオムニバス本で、各章ごとに様々なファインダビリティに関して具体例を挙げて説明しています。
この本を読んで感じたことは、検索という技術の方向性の変化です。今まではユーザがキーワード等の条件を指定して『検索する』ことが検索システムの主な機能でした。しかしこれからは、ユーザが指定したデータや、あるいは生活に埋め込まれたメタデータを利用して、ユーザの潜在欲求を満たすようなモノをシステム側からレコメンドしてくれる時代、つまりユーザが『検索される』時代になってきているのではないかと思いました。
また現存の多くの検索システムのように、全ユーザが同じ画面を用いて検索し、同じクエリに対しては同様の結果を受け取るような形ではなく、これからの検索システムは、個々の特性に合わせてどんどんパーソナライズされて形を変えていくのではないか、あるいは既存のデータを組み合わせて検索結果そのものを創り出してくれるのではないか、そのようにファインダビリティの可能性を広げてくれる一冊だと思います。
技術本ではないので、普段から生活の一部としてPCに触っている人であれば、プログラムを組んだことが無いような人でも、十分に読める内容だと思います。[大川内隆朗]