2006.09.15

【Book Review】仕事の中での学習 -状況論的アプローチ-

仕事の中での学習 -状況論的アプローチ-
上野直樹(1999) 東京大学出版 シリーズ人間の発達9

-「状況論」というコトバを理解したいならこの1冊-

「認知科学」は、学習環境の設計をしようとする私たちに「学習」や「知る」という概念について、様々な知見を与えてくれる分野です。この本は、80年代の後半以降、その認知科学の中で大きなムーブメントとなった「状況論」についての概説書です。

この本では、例えば次のようなものを「実体」として捉えるのではなく、ヒトや道具やコトバやテクノロジーの関わりの中で相互構成されるものとして捉えていきます。

機能システム/コンテキスト/プラン/コミュニティ/“マクロ”な社会/発達や学習

上記のようなものたちは、その複雑な成り立ちゆえに、私たちがその姿を描けば、次の瞬間変質してしまうナイーブなものです。あるいは、研究者がシステムを変革しようという意図で設計した道具を持ちこんだところで、再びもととよく似たシステム等が構成されてしまうというような、堅固なものでもあったりもします。

そんな幻のような対象に対して、果たして設計という行為が従来通りの意味(設計者の優れた意図が実体としての現実を変革する)を持てるのか、あるいはそのような視点を経た後に、設計という行為はどうあるべきなのか。

ま、そこんところはヤヤコシイですが、「状況論」を知ることよって、我々が道具や環境と認知の関係についての非常に整理された見通しを得られることは間違いないかと思います。

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