2006.09.01

内田樹 「子どもは判ってくれない」

ここ最近の愛読書になっているのが、内田樹氏の「子どもは判ってくれない」というエッセイ集である。

これが、すこぶる面白い。

教養が無いと嘆くものには、問題は教養の不足ではなく、「教養が不足している」同時代人としか自分を比較しないことにより「自分たちには教養が不足している」という事実そのものが認知されないことを説く。

「人に迷惑をかけない」という「社会人として最低のライン」だけを守ればいいだろう、という"正論"に対しては、自分自身に「社会人としての最低ライン」しか要求しない人間は、当然だけれども、他人からも「社会人として最低の扱い」しか受けることができないのだと切り返す。

職業選択というのは「好きなことをやる」のではなく、「できないこと」「やりたくないこと」を消去していったはてに「残ったことをやる」ものだと考え、自分が何かをやりたくない、できないという場合、自分にそれを納得させるためには、そのような倦厭のあり方、不能の構造をきちんと言語化することが必要だとする。それは難しいことだが、「だっせー」等と単純な語彙で己の嫌悪を語ってすませることができる人間では、「好きなこと」を見出して、個性を実現するなどできないことだと主張する。

こんな風に、物事に鋭く切り込むことができたら・・・。

眠りにつく前、僕は、いつもほんの少しの嫉妬と焦燥を感じることを正直に吐露せざるをえない。

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