2006.08.11

【Book Review】S.パパート『マインドストーム』

Seymour Papert (1980) "Mindstorms" Basic Books
(S.パパート 奥村貴世子訳(1982)『マインドストーム』未来社)

1960年代末にLogoという子ども向けのプログラミング言語を開発したシーモア・パパートによる、Logoの哲学と「強力な概念」の有効性について解説した本です。パパートについては、つい先日行われた山内研究室夏合宿の学習プログラム〈学習研究の古典を読む〉でも取り上げられました。

MITメディアラボ教授のパパートは若いころ、児童心理学者のジャン・ピアジェと共同研究を行っています。強力な概念は外から与えられるのではなく、Logoをプログラミングすることで学習者が自ら構成していくとする彼の考え方には、ピアジェの影響が強く見られます。

この時代特有の、コンピュータが教育の現場に入ればすべてがうまくいく、というユートピア的な未来予想図には必ずしも賛同できませんが(本当にそうなら学習環境デザイン論の必要性はないでしょう)、それまでのコンピュータ教育を転換させた、コンピュータを思考のツールとして活用するという考え方は、今から見ても有効なものだと思います。

ちなみに、ブロック遊びとプログラミングを組み合わせたLEGOの知育玩具「LEGO Mindstorms」は、彼の功績に敬意を表して、この本のタイトルから名づけられています。[平野智紀]

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