2006.07.13

ジーン・レイヴ&エティエンヌ・ウェンガー(著)・佐伯胖(訳)『状況に埋め込まれた学習』

ジーン・レイヴ&エティエンヌ・ウェンガー(著)・佐伯胖(訳)(1993)状況に埋め込まれた学習,産業図書,東京

教育学者のジーン・レイヴとエティエンヌ・ウェンガーによる、学習に関する本。日本では1993年に翻訳され、学習研究に一石を投じました。

「状況に埋め込まれた」という独特の言葉は、‘situated’の訳語です。「状況に埋め込まれた学習」とは、学習が個人の頭の中ではなく、人々と共同の活動に参加する中で行われる社会的営みであることを指した言葉です。この考え方は、学習研究者の関心を人間の頭の中(脳)から広く社会に向けさせることとなりました。学習を起こすには、個人の頭の中に知識をインプットするのではなく、学習が行われる場を整えればよいと考えたからです。

レイヴらは、学習が行われる場を「実践共同体(community of practice)」と呼びます。実践共同体とは、ある目的を共有し、ともに活動を行う人々の共同体です。そして、新参者が実践共同体に参加しながら次第にスキルや知識を身につけていく過程を、「正統的周辺参加(legitimate peripheral participation)」と呼びます。徒弟制を考えると分かりやすいでしょう。例えば、美容師は資格を取ったからといってすぐに一人前になれるわけではありません。最初は店で先輩美容師の手伝いをし、そのやり方を見ながら、一人前の美容師になっていきます。この過程が、正統的周辺参加です。

折りしも1990年代、日本では経営学において、組織が成員の知識を結びつけ、知識を組織に蓄積するための「ナレッジ・マネジメント」という考え方が流行しました。実践共同体は、人々が共に活動し知識を蓄積する場として、経営学者からも注目を浴びることとなります。そして今、「コミュニティ(共同体)」という言葉は、学習に限らず社会の様々な分野で耳にします。しかし、その定義は一様ではありません。学習におけるコミュニティ(共同体)を考える上で、その原点となる一冊が本著です。〔荒木淳子〕

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