2006.07.06
宮田加久子 (2005) きずなをつなぐメディア ネット時代の社会関係資本.NTT出版,東京
オンライン・コミュニティと社会関係資本(social capital)をテーマにした、明治学院大学の宮田先生の本です。宮田先生は博士論文『インターネットの社会心理学 : 社会関係資本の視点から見たインターネットの機能』を風間書房から出版していますが、この本はより一般向けに書かれています。
本書での社会関係資本は、Putnamの議論に基づいており、「信頼や互酬性の規範が成り立っている網の目状の社会ネットワークとそこに埋め込まれた社会的資源」と定義されている。社会関係資本の醸成・蓄積は、社会的ジレンマの解決や相互協力の促進をもたらすと期待されています。
オンライン・コミュニティの事例としては、オンライン・セルフヘルプグループや消費者コミュニティなどがあげられていますが、(オンライン)学習コミュニティに通じる内容が述べられているといえます。
信頼や互酬性は、協調学習、学習コミュニティ、CSCLにおいても重要な要素だと思われます。社会関係資本論で論じられる話は、教育工学・学習科学においても役立つことがあるのではないでしょうか。
比較的簡単に読める本なので、社会科学分野で大流行している社会関係資本に触れる最初の一冊として適切な本ではないかと思います。[北村 智]