2006.07.20
「リクルートのナレッジマネジメント―1998~2000年の実験」 リクルートナレッジマネジメントグループ 日経BP社 (2000/11)
株式会社リクルートにおいて、「営業が喜ぶことをしよう」という抽象的な目的の提示から、システムの運用に至るまでのプロセスを示したケーススタディ本。
ナレッジマネジメント(Knowledge Management)は、いわゆるデータに分類されるような「形式知」のみではなく、仕事上のノウハウなどの言語化されにくい「暗黙知」までも含んでいることを確認できます。
現代によく見られるような『情報共有ツールならwiki』『コミュニケーションツールならsns/blog』のような安易な発想ではなく、社内に潜在化している特有の問題意識を顕在化し、それに則った問題解決のためのシステムの提案から構築までの経緯が示されています。
システムを開発する際に、目的と方法論の逆転が起こってしまう(←結果的に成功する例もありますが…)ことも多いですが、この本の実践においては、きちんと目的に沿った方法論が展開されています。
1998~2000年の実践であり、技術としては決して新しいモノではありませんが、「そのシステムを使う人が嬉しいことをしよう」という発想自体はいつの時代も変わらないモノであるべきだし、そういった意味ではナレッジマネジメントの概念を学ぶうえでの教科書的な本といえると思います。[大川内隆朗]