2015. 2.24 開催
関西大学教育開発支援センター
反転授業公開研究会(FLIT共催)

反転学習はディープ・アクティブラーニングを促すか?

 FLIT Seminar

パネルディスカッション

森朋子 FLIT Seminar

森朋子
関西大学/准教授

青田浩幸 FLIT Seminar

青田浩幸
関西大学/学長補佐

3名の先生の話を伺い私の方で総括をしたいところではあるのですが、下手に総括をしてしまいますと個々の学びが削がれてしまうと思いますのでこのままパネルディスカッションに入りたいと思います。

反転学習では学生の質によってその効果が違うのではないかという質問がよく聞かれますがいかがでしょうか。

青田 関西大学のような大規模私立大学の場合、どうしても受け入れている学生の学力の幅が広くなります。その意味においては、反転学習において元々、学力を持った学生をさらに高いレベルに伸ばすことは可能だと思います。反転学習は対象がどこであって、どこまで出来たら成功なのかということが重要だと思います。私立大学において伸ばすべきところを伸ばさないとこれから生き残っていけません。

青田先生の意見に対してどのようにお考えでしょうか。

溝上 山内先生もそうだと思いますが、東大・京大の話をしたつもりではありません。反転学習はどこの大学でもやっていけると思います。確かに、能力の個人差というものはあります。そういったことから、教える学生の能力に合わせ、2歩、3歩上の目標を設定して反転学習やアクティブラーニングを行っていく必要があるのでは無いでしょうか。
ただ、大学や学部ごとの学生のクセや個性があると思います。学生のクセや個性を理解し、学生をどういう風に乗せていくかということはアクティブラーニングや反転授業に限らず重要なことだと思います。
これらのことから学生の質ではなく、学生の能力を踏まえることや学生を乗せていくコツといった面で差異が出てくるのではないでしょうか。

山内 基本的には溝上先生と同じで、学生の問題というよりは教員側の授業構成が難しいと考えています。東大・京大だからといって上手くいくとは限りません。正直、我々もなぜ上手く行ったのか完全にはわかっていません。これは研究開発中の方法なんです。そのため、学生の問題というよりは実は何がポイントなのかわかっていないことの方が問題なのです。

反転学習とアクティブラーニングを組み合わせた授業を作るのは難しいですが、挑戦すべきでしょうか。

山内 挑戦する準備ができている方は一緒に挑戦すべきだと思っています。ただ、準備ができていないところで挑戦し、学習者が反転学習やアクティブラーニングを二度とやりたくないとなる状況を避けたほうがいいと思います。そういった意味では、まず、完全習得型の反転学習ができ、比較的シンプルなアクティブラーニングを行って下さい。そして、その次に協調学習、PBLを行い、それらを統合する形はいいと思います。
ただ、何の準備も出来ていない状況で反転学習とアクティブラーニングを行うのは危険です。

メディアから見た反転学習

吉見 私は教育の専門家ではなく、メディアの専門家なのでメディアの視点から反転学習がどのように見えるかということを述べたいと思います。
メディアの方から考えると未来の授業は基本的には全部反転学習だと思います。乱暴な意見かもしれませんが、私はそう思います。なぜ、そう思うのかと言いますと、MOOC型のコンテンツは私にとって未来の教科書のように思います。つまり、教科書というメディアのいままでを考えますと、紙媒体というものに制約されてきました。紙媒体は消えます。そうなったときに未来の教科書どういった形をとるのだろうかと考えると、間違いなく起こってくることは教科書の中に映像が入ってくるということです。加えて、教科書がインタラクティブになるということです。そうすると、常に変化するといった形を教科書というメディアが持つだろうということです。

専門分野によってアクティブラーニングや反転学習が導入し易い、しにくいといった差はあるでしょうか。

山内 反転授業は理工系も含め、ほぼあらゆる分野でやられているのでどこの領域がやり易い、やりにくいということは無いと思います。ただ、違いがあるとすると、自作した手法を使うのか流通している手法を使うのかといった分化は出てくると思います。

最後に

デジタル化、グローバル化が進んで行く中で教育と学習のあり方も多様になるということは、今日確認できたと思っております。今回のテーマであります「反転学習はディープ・アクティブラーニングを促すか?」という問いに関しましては(私個人とすれば)条件付きですが、「YES!」と答えさせて頂きたいと思っております。これから検証が必要であったり、作り手のサポートが必要であったりといろんなものが整っていく必要があります。だた、後退する訳にはいきませんのでそういった意味ではチャレンジし、前に向いて歩いていくといったことは、学びの創り手としては必要だと思いました。

FLIT Seminar

閉会挨拶

田中俊也 FLIT Seminar

田中俊也
教育開発支援センター長

本日は東京大学から吉見俊哉先生、山内祐平先生、京都大学からは溝上慎一先生に貴重な講演を頂き、本当にありがとうございました。本シンポジウムのテーマは「反転学習はディープ・アクティブラーニングを促すか?」ということでしたが、テーマに沿った極めて重要な且つ、示唆に富むご講演を頂きました。また、パネルディスカッションでは大変刺激的な議論をしていただきました。

本日のテーマである「反転学習はディープ・アクティブラーニングを促すか?」につきまして、最後に森先生の方から「Yes!」と返答させていただきました。みなさんはいかがでしたでしょうか。
学びの質を向上させるといったみなさまの思いが学生自身の力、大学の教育力にそのものに貢献するのではないでしょうか。
今回のフォーラムにご参加いただきましたみなさま方が何らかの刺激を受けて持ち帰り、実践していただく良いきっかけになれば非常に幸いです。本日ご参加いただきましたみなさまに心から感謝いたします。どうもありがとうございました。

FLIT Seminar