反転授業公開研究会(FLIT共催)
反転学習はディープ・アクティブラーニングを促すか?
講演2
アクティブラーニングとしての反転授業
溝上慎一
京都大学/教授
最初に山内先生のお話を聞いていて、なるほど反転学習の立場から見るとこういう話になるのかと私の理解と近いなと感じました。
今回は、なぜ反転学習なのか、アクティブラーニングとして反転学習の理解、トランジション課題へ向けての効果検証指標、という3点をお話させていただこうと思います。
前置きをさせていただきたいのですが、まずはこのタイトルですね。「反転学習はディープ・アクティブラーニングを促すか?」森先生には申し訳ありませんが、こういうタイトルはあまり好きではありません(笑)。反転学習を通してディープ・アクティブラーニングに何とかしていくと言ったほうが良いかもしれません。
アクティブラーニングの前提条件
アクティブラーニングといっても、単にグループワークを入れれば良い授業になるという訳ではありません。私はアクティブラーニングを「社会的学習への拡張」と言っていますが、個人ひとりの中である物事や事柄を理解するのではなく、同じ理解に至るにしても、いろいろな人の考えや疑問を挟みながら理解することが重要です。
こういったことがなぜ必要なのかというと、社会の中である事柄を理解する、または考えを創っていくときに、ひとり一人の理解だけでは済まない場面が山ほどあるからです。いろんな人達と考えをすり合わせたり、疑問や葛藤などを解決したりしながら仕事、課題を仕上げて行く。これがアクティブラーニングの大前提です。
なぜ反転学習なのか
私はアクティブラーニングの1つの形態として反転学習を位置づけています。山内先生が先ほど、高次能力育成型の反転学習は非常に難しいとおっしゃられていましたが、私も全くそのとおりだと思います。
ではなぜ、反転学習なのか。やはり、完全習得学習型と高次能力学習型といったタイプの違いが挙げられます。まずはいわゆる低学力や基礎学力が十分ではない学生たちが反転学習によって理解が増したり、あるいは脱落者が減っていくといった完全習得学習の目的のもとに反転学習がなされている。そして山内先生もおっしゃられていましたが、重要なのは高次の能力を育てるということですね。個人の知識の理解のための時間を授業外に割り当て、あらかじめ予習をさせることができれば、教室の中ではディスカッションやグループワークなど様々な課題に取り組み、様々な学生との社会的学習の文脈のなかで学習していくことができます。
反転学習の評価
反転学習の効果検証は、他の講義型の授業と比較するなどして、検証していかなければなりません。例えば15回(の授業を通して)の変化を見るといったようなことですね。
ただし先ほど申し上げたように、アクティブラーニングの目指すものは、一授業の変化だけではなく、授業、授業を経験した学生が、将来に向かって成長していっているのか、(もっとor理想を)言えば、卒業してから3~5年間ほど追跡調査をして、アクティブラーナーとして育ったかという指標をもって検証していくといった作業が必要ではないでしょうか。そのデータを持って、単なる一教室の中でアクティブラーナーになるといった話ではなく、そういった経験を学士課程教育全体を通して積み上げていくことを検証していきたいと考えています。
Seminar Report List
2016
2015
2014
- 2014. 9.24 開催
反転授業公開研究会 - 2014. 5.24 開催
反転授業のデザインと評価手法
先駆者に聴く、反転授業の概念と実践事例 - 2014. 2.12 開催
授業の常識をひっくりかえす! 『反転授業』を考える