「反転授業」と「MOOC」への注目

山内祐平 FLIT Seminar

山内祐平
東京大学大学院情報学環/准教授(FLIT併任)

反転授業とは、説明型の授業をオンライン教材にして事前学習の宿題にし、従来説明型の授業後の宿題にされていた演習や応用課題を教室で、対面で行う学習形態です。対面の時間では、対面であることを活かし、普段解けないような難しい問題に挑戦する時間にしたり、グループ学習やアクティブラーニングを行ったりします。e-ラーニング分野におけるブレンド型学習の一形態ともいえます。

2007年頃から米国の公立学校教師の実践がきっかけで学校現場に草の根に広がり、近年は大学や企業でも導入され始め、この1年で急速に注目が集まってきています。日本でも、早稲田大学、島根大学、山梨大学の授業で導入されており、いくつかの評価研究も出始めています。

一方、2012年頃から様々な大学講義の録画ビデオをオンラインで無料提供する大規模公開オンライン講座(MOOC:Massive Open Online Course)等の動きが非常に活発になってきました。アメリカの大学を中心にCourseraやedX、UdacityといったMOOCプラットフォームが立ち上がっていて、今は東大を含め、このような取り組みに参加する大学が増えています。大学の講義映像をオンラインで見られるサービスは今までもiTunesUなどがありましたが、MOOCでは、授業だけでなく、オンライン上で宿題を出したり、学習管理システムを実装させたりしています。また、ここでは受講を完了すると、修了書をもらうことができます。

東京大学でも、Courseraに宇宙物理学と国際政治の2コースを開講しています。宇宙物理学は世界中140カ国以上から、48,393人の履修者がいました。年齢も9歳〜92歳と、非常に多様な人々に履修していただき、結果として、3,756人に修了証が発行されました。中には、この授業をきっかけに留学先を日本にしようかと検討する人もいたことは非常に嬉しいことです。

「東京大学情報学環 反転学習社会連携講座(FLIT)」について

山内祐平 FLIT Seminar これらの動きの中で、MOOC等に反転学習を組み合わせた新たな学習モデルを開発するため、2013年10月から株式会社NTTドコモと東京大学の共同研究という形で「東京大学 大学院情報学環 反転学習社会連携講座(FLIT)」が開設されました。FLITとは、Department of Flipped LearnIng Technologies の略です。
本講座のねらいは、以下の3点です。

  1. 反転授業に関連する学術的な理論の整理
  2. MOOCと連動した反転授業モデルの開発
  3. 大学の授業における反転授業の効果検証

日本版MOOCの推進と高等教育での活用に向けて

アメリカを中心に動いてきたMOOCですが、日本でも日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)が2013年10月に発足しました。NTTドコモがMOOCプラットフォームを開発し、国公立・私立大含め13大学が2014年春から順次開講予定です。当面は日本語の講座を中心に増やし、将来的にはアジアをターゲットにして他言語の講座も検討する予定です。

日本の反転授業では、反転用の教材を教員が手作りしています。MOOCが広がると、他大学の授業コンテンツを使って、別の大学の教員が授業をするといったこともあり得ると思います。MOOCと反転授業が繋がったときにどういったことが起きるのかということについて、日本の大学には全く知見がないのが現状です。

そこで、この領域のトップランナーであるサンノゼ州立大学のQayoumi学長にお越しいただき、反転授業とMOOCの活用についてのお話を共有していただきます。また、日本の大学が今後反転授業とMOOCをどのように活用し得るかということについて、東京大学 副学長の吉見先生を交えて議論したいと思っております。

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