2014. 9.24 開催
山梨大学大学教育センター
反転授業公開研究会(FLIT共催)

反転授業公開研究会

FLIT Seminar

一般講演
医学部産婦人科における課外授業への反転授業の導入の試み

平田修司 FLIT Seminar

平田修司
山梨大学/教授

山梨県では10年前、お産を扱っていた病院は14、診療所が22でしたが、現在ではそれぞれ7, 8ヶ所しかありません。この主な原因は、産婦人科医になる人が少ないことです。現在、山梨県では年間のお産6400に対してお産を扱える産婦人科医が50人強しかいません。厳しい現状を表面的に捉えた医学生の産婦人科離れが進んでいます。

産婦人科医はやりがいがあるのですが、講義形式ではなかなか伝わらないため、5年次生を対象にして、実習をメインとする課外授業のコースを開いています。月に1回、水曜の19〜21時に授業をしているのですが、時間内に終わらないことが問題でした。指導の内容によっては、24時を超えてしまうこともありました。5年次生は、通常の授業でもみっちり実習をしているので、両立できずにやめてしまう学生がおり、夜中までとなると指導にあたる医師達にとっても非常に負担になっていました。それをなんとか時間内に終わらせることはできないかと思っている時に反転授業のお話をいただき、この4月から導入しました。結果として、明らかにスムーズにできるようになりました。学生のパフォーマンスは向上し、授業時間が9時をまわることはほとんどなくなり、中間試験の結果も改善しました。また、指導者の負担も明らかに少なくなりました。

反転授業の実施報告
「英語学講義Ⅰ」

小林亜希子 FLIT Seminar

小林亜希子
島根大学/准教授

私が実施しているのは「生成文法理論」という文法の基礎を学ぶ授業です。しかし、長年やっていく中でなかなか解決できない問題が二つありました。まず、理論に馴染める学生、馴染めない学生の理解度に大きな差があること。もう一つは、専門用語がたくさん出てくるために一度休むと授業について行けなくなるということです。そこで、反転授業を導入しました。

カリキュラムの中で計6回反転授業を実施しました。パワーポイントのスライドと説明の音声ファイルを、動画ファイルに落として学生に共有しました。授業当日は、学生は予習をしてくることを前提に、復習問題を解く内容にしました。反転授業の効果についてテスト結果をみますと、反転が関わった授業のところは向上し、有意な差が確認できました。昨年度は成績が6割未満の学生がいたのですが今年度は1人もおらず、成績のばらつきも減りました。つまり、底上げ効果が出ていたと言えます。ドロップアウトも出ず、早く終わった学生には応用問題への言及もできました。

英語「上級者」レベルの学生を対象とした反転授業の導入

奥田阿子 FLIT Seminar

奥田阿子
長崎大学/助教

私は1、2年生の教養教育の「英語」授業を担当しています。本学では、e-learning教材を学生がなかなか使おうとしないという問題があり、英語学習に関する自律性が欠如していると指摘されました。また調査によると、3分の1ぐらいが自動クリックソフトを使った学習をしていることがわかりました。これが昨年度の問題点でした。

問題点をどうにか克服し、学生に学習の自律性を身につけてもらえないか、ということで今年度から反転授業を導入しました。教材として「New York Live」と「People at Work」に加え、意志力の研究者のビデオを使いました。授業では、まず、ビデオでわからなかったことをグループで確認し合い、教え合うという形式をとっています。また、予習で英作文を書いてきてもらい、ピアレビューをしてもらいます。加えて、「New York Live」の長崎版「Nagasaki Live」を作成し、後半は自分の意志力について考えるという活動を行い、15回目の授業で全授業の振り返りをしました。

結果として、個人での学習意識が確実に向上していることがわかっています。集団レベルでの学習意識の高まりも確認されています。また、学期末には75%の学生から良い効果を示すコメントをいただきました。ただ、残りの25%の学生は、授業の改善点についてコメントをされていました。成績は平均点に有意な差はありませんが、ばらつきは小さくなっています。また、ドロップアウトの学生も減り、出席率が98-100%でほとんど欠席がありませんでした。

FLIT Seminar