2016. 7. 3 開催
第5回 公開研究会

学生の学びは変わるか?反転学習のここまで、ここから

溝上慎一 FLIT Seminar

小講演1
アクティブラーニング型授業としての反転授業

溝上慎一 FLIT Seminar

溝上慎一
京都大学/教授

私の方からは「反転授業をアクティブラーニング型授業の中に位置付ける」ということと、「反転学習ではなく反転授業」ということでお話をさせて頂きます。

反転授業をアクティブラーニング型授業の1つとして位置付ける

溝上慎一 FLIT Seminar 私はアクティブラーニングを、「一方向的な知識の伝達を脱却し、それを乗り越えるための能動的なあらゆる学習」として定義しています。私が、反転授業をアクティブラーニング型授業の中に位置付けたい理由は単純でして、反転授業で大事にしている目的や背景は、アクティブラーニングでずっと言われてきたこととほぼ同じだからです。つまり、学習論としての技法・戦略は、他にも協同学習・協調学習・PBLなど様々ありますが、それを通して実現したいところはほとんど同じなわけです。
なので、学校教育の社会的機能の見直しを行っていくという現在の大きな課題に対して、アクティブラーニングという傘概念をまず置いて、入り口をしっかり押さえた上で、科目や学習目標などに合わせてそれぞれにあった技法・戦略をとるという捉え方が良いと考えています。そして、反転授業もそのような技法・戦略の一つとしての見方ができるというわけです。
そして、反転授業をアクティブラーニング型授業の1つとして位置付ける際、押さえていただきたいポイントは以下の4点です。

(1)インプットしたものを自分の言葉でアウトプットすることで、深い学習が必然的に生じます。なので、ただ話させれば良いとか、ただグループワークをさせれば良いというわけでは当然なく、アウトプットの意味を考えながら、深い学習に持っていく仕掛けを挟み込んでいかなければなりません。

(2)時代背景として、「知識をただ習得して、テストで測るだけで良いのか?」という問いがあることを押さえておくことが大事です。そしてこれがそのまま反転授業の目的の一つである高次能力育成の背後にあるものでもあります。

(3)学習者が中心となって能動的に考え、自らの言葉で説明するという活動を通して知識を再構成していくような学習のあり方(学習パラダイム)が、教育の目指すべき姿としてより顕著に意識されるようになっています。その目的に対する一つの手段の急先鋒として、反転授業があると私は考えております。

(4)「習得・活用・探究」というキーワードは、高等教育の中ではあまり言われませんが、初等中等教育の現行の学習指導要領に示されている非常に重要なものです。この3つの学習プロセスを踏まえてアクティブラーニング型授業を考えることで、初等中等教育から高等教育まで一貫して目指すべき学習の姿を捉えることができると考えております。反転授業は、習得を基礎とした上で、知識の活用、探究まで授業を行うことができる優れた手法であり、このようにアクティブラーニング型授業の一つとして反転授業を捉えることで、初等中等教育にも反転授業が繋がりやすくなると思います。

反転学習ではなく反転授業

溝上慎一 FLIT Seminar バーグマンは、「反転授業から反転学習へ」ということを言っています。バーグマンの定義に従うと、「反転授業」は言葉どおり授業学習と授業外学習を反転させたもので、「反転学習」は徹底的な学習パラダイムに立って、生徒主導の学習を達成することとなります。ですが、「反転学習」と言った時に気になるのは、教師のファシリテーターとしての役割ばかりが強調され、教科・科目の専門家としてのティーチャー(知識の専門家・提供者)の役割が軽視されてしまわないかということです。アクティブラーニング型授業を行うときは、グループワークにしても学習の振り返りにしても、単にやらせれば良いわけではなく、深い学習を導くためには、個とグループの学習プロセスのデザインや、それをまとめ上げる段階で、その教科のより高次の視点でまとめるといったことが必要で、その点において教師のティーチャーとしての役割は重要になります。そのような点を踏まえて、どちらの言葉を使うのかということを考えることが大切ではないかと考えております。