五月祭2日目の午後、情報学環・福武ホール地下2階にある福武ラーニングスタジオで、「東大と社会がつながる場」と題して、カフェミックス2008が行われました。
飲み物や軽食を片手に参加者同士が語り合う場として、東京大学の3つのキャンパスで行われている、「UTalk」(本郷)、「インテレクチャル・カフェ」(駒場)、「Kサロン」(柏)が集まりました。
1つ目はインテレクチャル・カフェプロデュースのプログラム。
先端研の澤昭裕教授の司会で、同じく福島智准教授のお話を伺いました。
福島さんは9歳で視力を、高校2年生の時に聴力を失い、コミュニケーションのない世界を経験し、自分の存在がここにあるのかさえわからなくなったそうです。
その後お母様の思いつきで、左右3本ずつの指の組み合わせで文字を表現する指点字を使い始め、触覚によるコミュニケーションが始まりました。
通訳をされるお二人が、聞き手のうなずきや、会場の笑いまで、手を通して伝えていらっしゃるのがとても印象的でした。
このことからもわかるように、福島さんはご自身のご経験から、「やりとりすること」の重要性ということを強く感じていらっしゃるようでした。
コミュニケーションの語源は、単に伝えるということだけでなく、新しいものを共有し一緒に何かを創っていくという意味も含まれるそうです。
カフェやサロンという場は、まさにそのような双方向の「やりとり」の場なのです。
2つ目のプログラムはKサロンプロデュース。
Kサロンは、大学、地域、企業など、柏の葉という新しい街を取り巻く様々な人が語り合う場として、柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)で開かれています。
UDCKディレクターの丹羽由佳理さんの司会で、行政、地域の企業、学生の立場から、柏の葉で行われているプロジェクトについてご紹介いただきました。
Kサロンは、情報発信の場であるとともに、みんなで考える場となっています。
知ること、アイディアを出すこと、それを育てること、続けていくこと。
それを支えるUDCK、Kサロンという場が、新しいまちづくりに関わる様々な人をつないでいます。
このような活動がうまくいっている裏話として、単に大学が地域に貢献するという気持ちだけでは長続きしない、というリアルなお話もしていただきました。
柏の葉では、研究を地域に開き、まちづくりに生かす、そしてその実践をまた研究にフィードバックさせていく、というサイクルが生まれています。
それが、「みんなで考える」まちづくりが続いていく原動力の一つになっているようでした。
そして最後はUTalkプロデュースのプログラム。
椅子の並びを変えて全員で丸くなって座ると、会場の雰囲気ががらりと変わりました。
話の中心がなくなり、あっという間にスピーカーと参加者との「やりとり」が始まりました。
まずは情報学環の山内祐平准教授からUTalkや福武ホールについてのお話がありました。
UTalkは、東大で何が行われているのかを広く知ってもらうため、どんな人が、なぜ、何をおもしろいと思って研究しているのか、という研究者それぞれの物語が伝わるほどゲストと近い距離で、お茶を飲みながら会話を楽しんでいただける場を作っています。
UTalkで研究について参加者の方とお話することで、研究者自身も発見があるのだそうです。
まさに、研究をひらくことや、双方向のやりとりなしには存在しなかった新しい何かがそこには生まれています。
今回は、東大で行われている3つのカフェ、サロンという試みが一堂に会しました。
参加者の方からも積極的に質問や感想が飛び出し、東大内外にも、同じようにゆるやかに人がつながる場を作ろうという試み、或いはその種があることがわかりました。
福島さんから「コミュニケーションができなくなった時、自分の存在を確かめることができなくなった」というお話がありましたが、最後は、コミュニケーショ ンを通して自分の存在を確認したいという思いから、今、カフェのような場が求められているのではないか、という言葉で締めくくられました。
[UTalkアシスタント:牧村真帆]