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2014/01/23

【開催報告】公開研究会「ミライバ」第3回:シェアハウスと家族の暮らし

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公開研究会「ミライバ」
第3回:シェアハウスと家族の暮らし
― シェア時代の家族とゲストの一軒家 Miraie ―
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 今まで独立して存在していた「家」「学校」「コミュニティ」の敷居が、近年徐々に低くなってきているように思います。東京大学 情報学環・福武ホールとミサワホーム総合研究所が開催する、公開研究会「ミライバ」では、この変化めまぐるしい現代社会のなかで、大きく意味が変わりつつある「場」の未来について考えていきます。

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 第3回の公開研究会は、普段の会場とは異なり、今回事例として取り上げたシェアハウス「Miraie(ミライエ)」にて行いました。今回のゲストは、Miraie の大黒柱である佐別当隆志さん。普段は株式会社ガイアックスにお勤めですが、ネット選挙運動解禁を目指した「One Voice Campaign」のメンバーでもあり、幅広く活躍されています。研究会前半は、佐別当さんの案内でMiraie を見学させていただき、Miraie が立ち上がった背景や、Miraie での暮らしの様子についてお聞きしました。後半は約20名の参加者の質疑に応えながら、家族の住まいや未来の家族の在り方についてディスカッションを行いました。

 居間や台所、トイレ、お風呂等を共用する住まいの形態は年々増加しており、特に都市部において、シェアハウスという住まいの形態は、20〜30代の単身者を中心に注目されています。賃貸住宅である場合が多いシェアハウスですが、Miraie が他のシェアハウスと異なる点は、シェアによる暮らしを想定し、家族も暮らす一軒家を設計されたところにあります。佐別当さん一家は奥様と娘さんの3人家族。佐別当さん一家と一緒に、数名の単身者が暮らします。また、国内外からゲストも宿泊できるように、ゲストルームも準備されています。

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 Miraie は屋上つきの3階建て。外階段を登って2階の玄関から入ると、20畳のLDKが広がっています。家の中心にある螺旋階段を下ると、1階にはゲストルームやシェアメイトが使う個室があり、3階へ上ると佐別当さん一家の部屋があり、屋上にも出ることができます。2階のLDK でまず目が行くのはハンモック。リラックスできるリビングは、人が繋がる場そのものとして機能しており、イベントを行ったり、友人が集ったりすることが多いそうです。また、螺旋階段が全ての部屋をゆるやかに繋ぐ役割として機能しています。

 「働き方の変化」への関心が高まる中、佐別当さんの関心は「住まい方の変化」にあります。働き方が変わると言われているならば、労働に密接に関係する暮らし・住まいの変化もみられるはずだという考えです。佐別当さんは職住近接の暮らしにこだわり、職場も家からすぐ近くにあります。家族に何かあればすぐに家に帰ることができるし、昼ごはんも家で食べることができる。仕事をしながら家族を気にかけることができる環境を整えています。

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 ライフスタイルそのものが変化していくと考えると、未来の家族の在り方と、それに基づく未来の家はどんな空間になっているかという点に着目されて建てられた家が「Miraie」です。未婚率・離婚率の上昇や、出生率の低下など、家族の在り方も変化している現代において、単身者が増え、子どもが大人と触れ合う時間が減るというような、生活の多様化が進んでいます。この時代を佐別当さんは「核家族の時代から『拡大家族』の時代への成長」だと述べます。こうした背景から、Miraie に集う人を「家族」と呼び、家族のような温かい空間を、家族の枠を広げながら作っていく家を目指しています。 また、シェアハウスに暮らす若者が増える背景に、ソーシャルメディアの影響もあると、佐別当さんは言います。戦後は三種の神器という言葉が生まれたように、家庭に新しい「物が幸せにする時代」と表現し、対照的に、現代は物があることによってコミュニケーションが減ってしまうということが当たり前になってきています。ものがないから隣近所と軽くシェアして交流が生まれるという場面が減るかわりに、若者はソーシャルメディアでコミュニケーションをすごく求めていると言います。収入と幸福感が比例していくという価値から、自分らしい時間や友達と過ごす時間を探している人が増えていることも、重要な背景だと言います。

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 Miraie はそのような社会の変化の中で生まれた「未来の家」であり、フューチャーセンターを参考に「フューチャーハウス」という概念を提案しています。「未来の家」だからこそ、Miraie は、オープンマインドで前向きな思考で、自分でやりたいことを自ら作り出し行動できることができる人が住人として求められると、佐別当さんは言います。また、ゲストの出入りが多いことも、Miraie の特徴と言えます。佐別当さんは、「ゲストを招くことで、家が循環する」と考えています。多くの旅行者も宿泊しに来るそうで、ゲストもホテルにて1人で過ごすのではなく、夜も充実した時間を過ごしているようです。

 会場の参加者からは、それぞれの興味にもとづいた質問が多く出されました。中でも、「子育ての狙いやメリット」についての質問は、大きな議論となりました。多様な大人たちが、自分たちの子どもと、小さい頃から接してくれるのは嬉しいと言います。また、その面白い刺激を受けながら多様性を育み、多様な人と暮らしをシェアすることで協調性が育まれると考えています。また、奥様にとっても、「子どもといるだけの生活よりも、今の生活のほうが、視野が狭くならず、ストレスがたまらない」とのお話もありました。「正解がない時代だからこそ、自分から楽しんで学ぶ力、自ら作り出す力を育み、答えを作れる人になってほしい」との佐別当さんの言葉を受け、会場では「ソーシャルベイビー」という概念が生まれました。
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 昨今、シェアハウスにおける暮らしに対応できる法律の整備が追いついていないという問題が指摘されています。その一方で、シェアハウスへの関心はますます高まっており、単に安く部屋を借りるという目的から、コンセプト型のシェアハウスに暮らすことで、生活を豊かにしたいと考える若者が増えています。多様な暮らし方が認められるよう、社会の変化が求められていると言えるのではないでしょうか。「ワーク・シフト」という本が出版され話題となっていますが、「ライフ・シフト」を体現している佐別当さんのお話は、子育てや学びの場のシフトという点においても、示唆に富んでいました。

 今回お話しいただきました佐別当隆志さん、そしてお集まりいただいた参加者の皆さま、どうもありがとうございました。

[ ミライバ事務局(NPO法人Collable):山田小百合 ]